7代目サニーをベースに開発されたスペシャリティカー
トヨタ・カローラスポーツは今でも健在だが、その昔、カローラのライバルといえば日産のサニーだった。サニーは日産を代表するファミリーカーで、4ドアセダンが主体だが、初代から4代目まではスポーティーな2ドアクーペもあり、とくに2代目のB110はモータースポーツでも大活躍していた。6代目サニーの派生モデルで、クーペスタイルのRZ-1が投入され、その後継車として1990年に登場したのが今回取り上げるNXクーペだ。
非常にオーソドックスな小型車だった、7代目サニー(B13型)がベースでメカニズムは共用。しかし、内外装ともに面白みのないB13サニーに対し、NXクーペは米国の働く女性をターゲットにした「セクレタリーカー」として開発された。
グリルレスが特徴的だったエクステリアデザイン
エクステリアデザインは、日産デザインインターナショナル(NDI、現・NDA)が担当し、かなりカジュアルなスタイリングに仕上がっている。グリルレスのフロントエンド、少し引っ込んだライトなどは個性的で、米国市場向けにTバールーフも用意されていた。
CGを使って、NXクーペのボディをクニャクニャさせるCMと、「タイムマシンかもしれない」というキャッチコピーも印象的だったが、国内ではイマイチ販売が振るわなかった……。
車重も1050kgでわりと軽く、重心も低かったので、スポーツクーペとしての資質はそれなりにあった。タイヤも185/60-14だったため走りも期待できそうだったが、乗ってみるとそうでもなかった。
中古市場にはめったに出てこないレア度が高い1台に
動力性能もマイルドだったし、ライバルのシビックがダブルウィッシュボーン、レビンがスーパーストラットなどを採用するなか、NXクーペは四輪ストラットで一世代前のFF車のハンドリングそのもの。
全体的に仕上げが甘く、もっとスポーティに煮詰めてくれればよかったのにと思ったものだが、当時日産にはS13シルビアもあれば180SXもあり、NXクーペの兄弟車としてパルサーもあった。
そう考えると、NXクーペまでスポーティ路線に向かう必要はなかったのかもしれないが、結果としてNDIによるカリフォルニア風スタイルと雰囲気だけのクーペになってしまい、デビューから4年後、1994年には一代限りで姿を消してしまうことに……。
1万5000台ほどしか売れなかったので、稀少車なことは間違いなく(中古車も滅多に出回らない)、まずNXクーペ同士がすれ違うこともない。もし現在も所有している人がいれば、大事に乗り続けてほしい。