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ホンダ「タイプR」はFF世界最速タイムを目指して開発! 歴代「赤バッヂ」モデルの30年の歴史とは【後編】

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TEXT: 藤田竜太(FUJITA Ryuta)  PHOTO: AMW編集部

シビックタイプR(FK8)

 8代目のシビック(FD型)の販売終了以来、しばらくラインアップ(9代目は海外展開)されなかった同車だが、7年ぶりの2015年に復活(シビック通算:10代目 FC/FK)。それに合わせて登場したのがタイプRシリーズでいえば5代目のFK8だ。

 歴代タイプRは、まずスタンダードモデルが開発され、それをチューニングしたハイパフォーマンスバージョンとしてあとから市場に投入されるスタイルだった。しかし、FK8はスタンダードバージョンと同時開発になった。

 生産は、先代と同じくホンダUKが担当している。ただしFK8は限定車ではなくなった。ボディは5ドアファストバックで、サスペンションはフロントに新開発のデュアルアクシス・ストラット・サスペンション、リヤもマルチリンクに変更。

 エンジンはK20Cのままだが、10psのパワーアップ(320ps)を果たした。ホンダ車では初となるレブマッチシステム(オートブリッピング)を採用し、トランスミッション(6速MT)もローレシオ化。ニュルでのFF市販車最速タイムも更新している(7分43秒80)。ターゲットはフォルクスワーゲン・ゴルフGTIクラブスポーツSだった。

 モータースポーツでは、TCRジャパンシリーズやスーパー耐久シリーズにも参戦している。

シビックタイプR(FL5)

 そして2022年に登場した現行のシビックタイプR。FK2、FK8はホンダUKの生産だったが、このFL5は日本の埼玉製作所で作られるようになった。

 エンジンはK20Cと変わらないが、新開発のモノスクロール・ターボチャージャーの採用などで、出力は330psとさらにチューニングが進んでいる。また6つのパラメーター(エンジン/ステアリング/サスペンション/エンジンサウンド/レブマッチシステム/メーター)を自分好みにカスタマイズできるINDIVIDUALを採用したのもトピックだった。車載ナビにTYPE R専用データロガーアプリも標準装備されている。

 サーキット走行時には、運転レベルや車両挙動を5つの運転指標で採点。スコアや運転ランクも表示される本格的なデータロガーも搭載しているのも見逃せない。

* * *

 以上、11台のタイプRを見てきたが、タイプRはホンダというメーカー自身がチューニングカーを仕立て、走りを磨き上げてきたところに、ワクワクし共感してきた部分がある。これからもホンダにはこうしたワクワクできるタイプRを作り続けてほしいと思うが、そのためには、まず魅力的なベース車が何より必要だ。

 FL5の速さももちろん評価するが、サイズ的にいえばフィットクラスのタイプRが欲しいのが本音。そしてベース車に対し、チューニングしすぎない点もけっこう重要なのではないだろうか。ベース車からあまり乖離しすぎてもタイプRの魅力は薄れると思うし、やり過ぎないからこそお手本にもなるからだ。

 またタイプRのようなクルマに一番必要なのは、単純な速さではなく、乗ってワクワク、ドキドキする、感性を刺激される気持ちのいい走りであり、愛されるクルマであること。ホンダのF1パワーユニットの開発トップ、HRC(ホンダ・レーシング)の浅木泰昭四輪レース開発部部長は、「エンジンは脈動があって、動物の心臓の動きとよく似ています。その脈動が生物である人間の感情を揺さぶるのを僕は感じているんです」とコメント。

 ホンダはF1でも他社に先駆けカーボンニュートラル燃料を採用していたことを公表しているが、この先、市販車もバイオ燃料やEVがメインになったとしても、ホンダには速さで乗り手を悦ばせる「タイプR」を作り続けてほしいと願っている。

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  • 藤田竜太(FUJITA Ryuta)
  • 藤田竜太(FUJITA Ryuta)
  • モータリング ライター。現在の愛車:日産スカイラインGT-R(R32)/ユーノス・ロードスター(NA6)。物心が付いたときからクルマ好き。小・中学生時代はラジコンに夢中になり、大学3年生から自動車専門誌の編集部に出入りして、そのまま編集部に就職。20代半ばで、編集部を“卒業”し、モータリング ライターとして独立。90年代は積極的にレースに参戦し、入賞経験多数。特技は、少林寺拳法。
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