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全身サビだらけのポルシェはアートでした。凡才には理解不能なダニエル・アーシャム作「Bonsai(ボンサイ)356」とは?

日本の美意識・感覚である「侘び寂び」を、素材がむき出しとなった可動車両で表現

ポルシェ「356」がアートになった

 ポルシェと現代アーティストがコラボレーションしたアートカー「Bonsai 356(ボンサイ 356)」が日本初公開。ポルシェのブランド体験施設「ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京」で公開後、11月18日(金)から20日(日)には渋谷パルコでも公開されている。

現代アーティストのダニエル・アーシャム氏とコラボ

「Bonsai 356」はアメリカの現代アーティストであるダニエル・アーシャム氏が、1955年製のポルシェ「356スピードスター」を用いて製作した作品。日本の美意識・感覚である「侘び寂び」を、素材がむき出しとなった可動車両で表現したものとなっている。

 不完全なものを受け入れ、時の流れの中に安らぎを見出すことが、この「Bonsai 356」で体現されているという。また、この作品を製作するにあたり、クルマの歴史に寄り添い、車体の経年変化や摩耗などを表現するため、約2年の歳月をかけているそうだ。

ベースとなった356スピードスターは走行可能な個体だ

 なお、ダニエル・アーシャム氏は素材となった356について次のようにコメントしている。

「356は、ヘリテージブランドの原点として、ポルシェの中でも非常に興味深い位置にあります。70年近い歴史をもつこのクルマには、私たちが知っている現代のポルシェブランドのルーツが、最も純粋な形で含まれているのです」

 ダニエル・アーシャム氏はニューヨークを拠点として活動する現代アーティスト。オブジェなどだけでなくステージデザイン、建築デザイン、ディオールをはじめとしたファッションとのコラボレーションなど幅広く活動している。日本では、とくにポケモンとのコラボレーションが有名だ。

 外装は、まず塗装をすべて剥がし、現在に至るまでの修理や仕上げを元に戻すことで、溶接部やピットマーク、時間の経過などによる自然な摩耗がすべてそのままになるよう作業が行われた。そして、表面を保護するため、アマニ油を塗布している。ヘッドライトカバーやナンバープレートまで、使いこまれたオリジナルパーツで構成された。ヘッドライトカバーに至ってはサビた状態だ。さらに、リヤのエンジングリルには、寺社などに見られる緑青仕上げのブロンズが用いられた盆栽のレリーフが飾られている。

 見た目はいかにも古びた佇まいだが、機能パーツは新車(工場出荷時)のレベルまでレストアされており、普通に走行も可能だ。

藍染やデニムが用いられたインテリア

 インテリアはファッションデザイナーの小木“Poggy”基史氏と藤原裕氏とコラボレーションし、日本の伝統的なファブリックで構成している。運転席と助手席、トランクカバーは藍染のパッチワークを施したファブリックを採用。ドアトリムやシートの縁には藍染の綿布が縫い付けられている。さらに日本製のデニム素材でルーフが覆われている。

 これらのファブリックは伝統的というだけでなく、使いこむほどに味わい深くなる素材がセレクトされており、コンセプトである「侘び寂び」をさらに高めているという。

 さらに、トランクルームに収納されたスペアタイヤの下には畳が敷かれている。この通常は居住空間の床材として用いられる畳を用いることで、日本建築との結びつきを表し、お客様を迎えいれる温かさ(おもてなし)を表現するディテールとなっている。

「Bonsai 356」の展示は、渋谷パルコの1F公園通り側入り口前で11月18日(金)から20日(日)の11時から21時(雨天中止)。その後は、ポルシェスタジオ銀座で11月21日(月)から27日(日)、ポルシェスタジオ日本橋で11月28日(月)から12月4日(日)の予定となっている。

 また、期間中にはダニエル・アーシャム氏が来日。専用アプリなどから無料で視聴することができるPodcastのポルシェジャパンオリジナル企画「Bucket List -Driven by Dreams-」(11月23日、30日公開)に出演することが決定している。

「Bucket List -Driven by Dreams-」は夢を叶えつつもさらなる夢を追い続けるアーティスト、アスリート、起業家などをゲストに迎え、夢にまつわるエピソードや思いなどをホストと語り合う約30分のPodcastプログラムだ。

AMWのミカタ
 日本では古来より「新品」よりも「使い込まれた」ものの方に「美」を見出してきた。「古美(ふるび)」という言葉もあり、新しいものをあえて使い込んだように仕上げることを「古美をかける」ともいう。現在ではクルマのカスタムの手法のひとつとして「エイジング」があるが、最近はラッピングやペイントで表現しているケースが多い。その点、「Bonsai 356」は数年かけてリアルな錆で文字通り「侘び寂び」を表現している点に好感が持てる。茶器を使い込むことを「育てる」ともいうが、まさしく「Bonsai 356」は育てて愛でる作品と言えるだろう。

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