499台限定のスペチアーレ
フェラーリが2013年のジュネーブショーで発表した「ラ フェラーリ」は、限定生産を前提としたスペチアーレとしては、「エンツォ」に続くモデルである。生産数はわずかに499台。それを購入するためのウェイティングリストに自らの名を連ねるためには諸説があるが、RMサザビーズの見解によれば、直近に新車のフェラーリを2台以上購入し、かつ過去10年間に6台以上を所有していることが条件のひとつとなっていたという。
F1譲りの運動エネルギー回生システム「HY-KERS」を採用
だがそのような厳しい条件にもかかわらず、499台のラ フェラーリは、ジュネーブショーでの発表時点ではすでにソールドアウトの状態にあったという。実車を見ることもなくフェラーリとの絆を信じたカスタマー、そして彼らとフェラーリとの強い信頼関係には改めて感動の念を隠せない。
ラ フェラーリは、そのようなカスタマーの期待通りにメカニズムでも最新の構成をもつモデルだった。最も大きな特徴といえるのは、800psの最高出力を誇る6.2LのV型12気筒自然吸気エンジンに、F1マシン譲りの運動エネルギー回生システム「KERS」をロードモデル用にフィードバックした「HY-KERS」を組み合わせていることで、そのアシストによってシステム全体の最高出力は963psにまで高められることになった。組み合わされるトランスミッションはゲトラグ製の7速DCTとなっている。
カーボンファイバー製のモノコックも、ラ フェラーリのためにさらに軽量で強靭な設計へと変化した。前作エンツォとの比較では、ねじれ剛性は27%向上、その一方で重量は20%も軽量化されているのだ。
15セルのバッテリー・モジュールをフロアに8個も搭載しているにもかかわらず、ボディサイズはエンツォよりも大きくはならず、また重心は35mm低くなって安定性がさらに改善された。
フェラーリのデザイン・センターによって描かれたボディスタイルは、現代のF1マシンとともに、「330P4」や「312P」のようなクラシックなフェラーリのレーシングアイコンを感じさせるフィニッシュ。もちろんそのエアロダイナミクスは現在でも最高水準にあることは確かだ。
予想落札価格にわずかに及ばず
RMサザビーズが200万〜250万ポンドの予想落札価格を提示したロンドン・オークションでの出品車は、グランツーリスモ・コレクションに新車でデリバリーされたもの。つまりこのコレクションのオーナーは、499人のネームリストの列に並ぶ権利を勝ち取った人物ということになるわけだが、納車後もそれをエアコンの効いたガレージにしまい込むことはしなかったようだ。
現在示されている走行距離は2万4233マイル(約3万8773km)。もちろんその間のメンテナンスはしっかりと行われており、このラ フェラーリには3万ポンド(邦貨換算約510万円)以上の整備に関する請求書も添付されていることもそれを証明している。
限定モデルとして納車時に発行された貴重なイエローブックのほか、カーカバー、モノグラム・フォトアルバム、オーナーズマニュアル、レザー製のオーバーナイトバック等々の備品ももちろん完備。
そのようなコンディションの良さが高く評価されたのだろう。2014年式のこのラ フェラーリは、予想落札価格にはわずかに届かなかったものの、197万3750ポンド(邦貨換算約3億3000万円)での落札となった。
最高速350km/hオーバーの実力を誇るラ フェラーリ。新たにそれを手にしたオーナーにも、その走りを十分に楽しんでもらいたいものである。