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納車から1年足らずで7億円に! ブガッティ「シロン」の30台限定「シュペールスポール300+」とは

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: Courtesy of RM Sotheby's

ブラックにオレンジのデフォルトカラー

 2019年のスピード記録達成により「レガシー」を築いたブガッティは、ほどなくシロン・シュペールスポーツ300+として、世界限定30台で生産すると発表。2年間にわたるテスト期間を経て、正式発表の9カ月前、2021年末にオーダー受付を開始したという。

 今回RMサザビーズ「LONDON」オークションに出品されたシロン・シュペールスポール300+は、30台が限定生産されたうちの1台。「グランツーリスモ・コレクション」の名のもと、フェラーリのスペチアーレ各モデルや1980年代のグループBラリーマシンなどを保有し、同じオークションには2台のブガッティ「EB110」も出品したプライベートコレクターから依頼を受けて、オークションに登場することになったという。

 この個体は、ロンドンを拠点とするブガッティの正規代理店、H.R.オーウェンを介してオーダーされ、新車時からグランツーリスモ・コレクションに収められたとのこと。

 モルツハイムのアトリエで仕上げられた30台のシロン・シュペールスポール300+は、ブラック・カーボンにジェット・オレンジのレーシング・ストライプが施され、マグネシウム製の超軽量ホイールが組み合わされるのがデフォルト。今回の出品車も、そのカラーリバリーとされている。

 また、インテリアはベルーガ・ブラックのレザーにアルカンターラ、ブラック・カーボンで構成され、ジェット・オレンジのハイライトが引き立つスタイルに仕上げられている。

特別中の特別なブガッティは、約7億円で落札!

 ブガッティのモールスハイム本社発行のドキュメントによると、当初の注文日は2019年12月で、グランツーリスモ・コレクションへの引き渡しは2022年1月とのこと。その後はほとんど走行することなく、オークション用の公式WEBカタログが作成された時のオドメーターは、わずか1416マイル(約2279km)に過ぎなかった。

 現時点で入手可能な、おそらく世界で1台のブガッティ シロン・シュペールスポール300+に、RMサザビーズ欧州本社とグランツーリスモ・コレクションは400万~450万ポンドのエスティメート(推定落札価格)を設定。

 そして2022年11月9日に行われた競売では、419万5625ポンド、日本円換算で約6億9950万円という驚くべき価格で落札された。すなわちユーロとポンドの違い、為替レートの時期による差異を考慮しても、新車時のプライスを大幅に上回る大商いとなったのだ。

* * *

 ブガッティ・シロンは全車両が伝説的ともいえるが、とくにこのようなスペシャルモデルはごく少数の限定生産であることから、たとえブガッティの既存顧客であったとしても、新車として入手するチャンスを逃してしまう事例もあり得るだろう。高額の追加料金を支払ってでも、まだ新車同様であれば入手したいと考える愛好家は、決して少なくはないと思われる。

 今回の落札価格には、特別中の特別なクルマを求める超富裕層の志向性が、うっすらと透けて見えるかに感じられたのである。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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