最先端技術を駆使した新世代BEVの第1弾
ボルボは2022年11月9日にスウェーデン本社にて、新たな7人乗り電気自動車(BEV)「EX90」を発表した。ボルボが「多用途でスタイリッシュなファミリーカーであり、現代的なプロポーションを持ち、コアコンピューティング、コネクティビティ、電動化などの最先端技術と組み合わせて、安全性、効率、デザインを最適化した」とする新世代のフラッグシップSUVだ。
将来の自動運転技術に対応したハードウェア
2030年までに販売モデルのすべてをBEVとし、2040年までにクライメイト・ニュートラル(気候中立)な企業になることを目指しているボルボ。それを実現するべく、毎年1台ずつのBEVを発表していくことを宣言している。EX90はその最初のモデルとして登場した。
ちなみに、クライメイト・ニュートラルは二酸化炭素を含むすべての温室効果ガスを対象に、製造工程などでの排出量を代替措置やほかの活動で削減・吸収することで、その排出量を実質ゼロとすることを目指す、というものだ。
EX90にまず登場するモデルはツインモーターの4WD仕様で、111kWhのバッテリーを搭載。一充電あたりの航続距離を最大600kmとし、システム合計の最高出力は517ps、最大トルクは910Nmとしている。また、バッテリーの電力で家庭の電力をまかなうV2Hや、ほかのEVに充電することも可能とした初のボルボモデルでもあるということだ。
ボルボが得意とする安全装備は、これまでのどのボルボ車より高い安全性と同社がうたうレベルとなっている。最新のLiDAR(レーザー照射の反射光の情報をもとに対象物の形状や距離などを計測する技術)やカメラなどをコアコンピューターに接続することで、リアルタイムに360度ビューを表示。その最新レーダーやカメラは、ステアリングサポートをはじめとした運転支援機能パイロットアシストの信頼性や機能向上に寄与する。
さらに、それらのセンサーにより、将来の自動運転技術に対応したハードウェアを備えた最初のボルボ車になっているという。その安全システムやインフォテイメント、バッテリー管理などはコンピューターで制御され、OTAにより定期的なソフトのアップデートが行われることとなる。
また、独自開発したアルゴリズムにより、ドライバーの視線の集中度を測定し、注意力散漫や眠気などに対し警告を発してくれる。さらに居眠りや体調不良の際には、車両を自動で停止して、SOSを発してくれる。
Googleがメインとなる
インテリアは14.5インチの縦型センタースクリーンに主要な操作などの機能を集約させ、すっきりしたデザインとなっている。
ここでも最新技術が活躍しており、車載スクリーンやヘッドアップディスプレイなどに最先端3Dツールなどを採用、ディスプレイは適切なタイミングで精査した情報を提供することで道路から目を離さないようにサポートしてくれる。
通信システムは5Gを使用、インフォテイメントシステムはGoogleが用いられており、Googleアシスタントによるハンズフリー支援、Googleマップのナビ、Google Playのお気に入りアプリなど、アプリやサービスが組み込まれている。
また、立体音響技術であるドルビーアトモス、Bowers & Wilkinsオーディオシステム、スマートフォンをキーとしたフォンキーテクノロジーなども備わった。そして、それらはクライメイト・ニュートラルを実現すべく天然素材や責任ある方法で調達された素材を用いた、快適でエレガントなスカンジナビアンデザインの室内に用いられている。
シャシーも新開発されており、EX90では約15%の再生スチール、約25%の再生アルミニウムを使用。クルマに使用されるプラスチック全体の約15%に相当する、48kgの再生プラスチックとバイオベース材料が使用されており、ボルボのクルマでは最高レベルとなる。
生産は2023年から生産開始予定となっており、グローバルモデルとして、まずはアメリカで生産。次いで中国でも生産される予定となっている。
AMWのミカタ
2011年に日本での販売台数が1万台を超えたボルボ。デザインが洗練されたことや、ドイツプレミアムブランドに比べてバリューあるプライスなどがその要因と思われるが、エリアとしては都市部がメイン。これを裏付けるようにディーラーも集中している。都市部では、郊外の一軒家に住むオーナーだけでなく、マンションに住まうオーナーも相当数にのぼるのは想像に難くない。ここで問題になるのは、2030年以降に完全にBEVモデルのみになったときだ。マンションの機械式駐車場などでは、充電の問題もありBEVは現実的ではない。ボルボが今後も日本での販売をキープするには、都市部だけでなく地方での販売がキーとなるであろう。