36年の歴史に幕を閉じたレジェンド
初代ホンダ・レジェンドは、1985年に誕生した。米国市場では、新しい販売店網となるアキュラの専用車種として位置づけられている。
トヨタから「セルシオ」、日産からインフィニティ「Q45」が誕生するのは1989年のことであり、アキュラ同様にレクサスやインフィニティの販売店網の整備も同時に進められたが、その点でもホンダは、トヨタや日産に先んじていた。
上級4ドアセダンでありながら前輪駆動を採用
初代レジェンドは、米国ではアキュラの最上級車種の位置づけであったが、英国では提携関係にあったブルティッシュ・レイランド(BL)のローバーの車種として販売されている。エンジンは、ホンダ初のV型6気筒で、排気量は2Lと2.5Lであった。のちに、2.7Lエンジンを追加している。
1980年代は、ホンダの第2期F1時代でもあり、2Lエンジンには、ウイングターボと名付けられた可変式過給機の追加採用も行われている。
特徴的なのは、上級4ドアセダンでありながら前輪駆動(FWD)であったことだ。当時はまだ、上級車といえば後輪駆動(RWD)というのが常識であった。もちろん、米国ゼネラル・モーターズ(GM)にはFWDのキャデラックも車種構成としてあったが、それらを含めてもFWDの高級車はまだ少数派だった。
安全についてもホンダは日本車のなかで先行的立場にあり、エアバッグやABSをレジェンドでは採り入れ、トラクションコントロールも導入するなど、単に高級というだけでない、ホンダの人間中心の考えに基づく装備の開発や導入にも力を注いでいた。
2代目には2ドアクーペを設定
1990年に登場する2代目では、FWDであることに変わりはないが、エンジンを縦置きにするといった試みもなされた。ドイツのニュルブルクリンクでの開発も行われたとされ、FWDであっても操縦安定性の高い高速性能を追求する姿がそこにあった。また、初代で選択肢として設けられていた2ドアハードトップに替えて、2代目では2ドアクーペが設定された。走りのいい上級車という狙いどころであった。
走りのよさの追求という点では、3代目と4代目もこだわりを感じさせた。3代目では、ユーロと名付け欧州での走りのよさを思い起こさせる車種設定があった。4代目ではハイブリッド車に4輪駆動方式を採用。ただし、モーター駆動となる後輪の安定性にやや欠ける面もあった。そして5代目では、スポーツカーのNSXと同じスポーツ・ハイブリッドの4輪駆動を採用するのである。
とてつもなく速い上級4ドアセダンという持ち味になったレジェンドではあったが、4ドアセダンそのものの人気が低迷するなか、生産する狭山工場の閉鎖も重なり、2021年に生産を終了し、36年の歴史に幕を閉じたのである。