札幌から岐阜に引っ越しD1ドライバーを目指す!
R’s Meeting2022の会場で見つけた女性GT-Rオーナーを紹介。今回はソーシャルメディアインフルエンサーで、来シーズン、岐阜県の「SHIBATA DRIFT RACING TEAM」からD1ドライバーを目指すという「meron(めろん)」さん。果物のメロンのスペルはmelonだが、「GT-R好きなので“L”でなく“R”」というこだわりよう。愛車は1997年式のBCNR33(スカイラインGT-R)。ボディカラーは落ち着きのあるソニックシルバーだ。彼女の気になるGT-Rライフをお届けしよう。
中学時代にR33好き男子と出会ったことが現在に至るきっかけ
じつはmeronさん、4年前の2018年、GT-R Magazineに北海道釧路市に住む「GT-R女子高生」として取り上げられている。免許をも持たない女子高生が、BCNR33を購入。しかも、アルバイトを4~5個掛け持ちし、親の援助はなしという、当時SNSを騒がせたニュースの真実を専門誌として確かめたいという思いから取材となったのだろう。
誌面を見返すと、小学2年生のときに兄の影響で見たアニメの『頭文字D』がクルマ好きとなる原点で、中学2年生でクルマの情報を積極的に収集。アーケードゲームでR33好きの男子と話を交わすことになったのが、現在に繋がるきっかけ。
「33って失敗作と言われているけど、本当のところは乗らないと何も分からないよね」
そう語った彼の言葉が今も脳裏に残っているという。そして、ほぼ時を同じくして街中で偶然見かけたBCNR33にひと目で恋した。
普通の女子高生がどうやって、4つも5つもアルバイトを掛け持ちできるんだ!? という疑問はあるだろうが、彼女は短時間スクーリングのみの通信制高校に通っていたから可能だった。それでも高校生がGT-Rを買うには、寝る暇を惜しんで働き続けなければ無理だったろう。
頑張り抜いて親の援助なしに17歳でGT-Rを購入
そこまで、彼女がクルマを買うために努力したのは、1日でも早く本当の意味でクルマ仲間に加わりたかったから。兄の誘いで参加したリアルなクルマの集まりは同じ趣味を共有できる場所で非常に居心地がよく、クルマを所有するする人たちが眩しく見えた。そして参加回数が増えるにつれて、その世界が自分の居場所と感じたという。だから一刻も早く免許を取り、自分の愛車で参加したかったのだ。
目標は「愛車は最初からBCNR33」と「車体と車検代を含めて300万円」と決め、2017年3月にGT-R貯金を始め、わずか13カ月後の2018年4月に達成。翌月の2018年5月、免許取得前に念願のBCNR33 V-specを契約した。地元のショップには「完成したクルマではなく、手を入れることでGT-Rを理解し、楽しみながら成長していきたいので、ベース車を探してください」と依頼したことからも、R33とともに歩みたいという思いを感じる。
また、免許取得までは購入したショップがクルマを預かってくれることになり、時間があればお店に出向いて窓を拭いたり、洗車をしたり、眺めたりと足繁くショップに通った。待ち遠しいが、幸せな時間であったことは想像に難くない。
GT-R Magazineの取材は誕生日直前の2018年11月に行われ、12月には彼女のBCNR33に対する気持ちを編集者がしたためた雑誌が発刊。その文章は「クルマに情熱を注ぐ彼女にエールを送る」という言葉で締められていた。
BCNR33を維持するために無我夢中で駆け抜けた10代
今回はその後の彼女とR33のストーリーだ。雑誌発刊後、彼女のSNSには心無いコメントが以前にも増して届くようになってしまったという。「あのころは世間知らずで、若かったですね」と今の彼女は笑って話すが、18歳には相当応えたに違いない。それでも免許を取得し、GT-Rに乗れる日々がそれを打ち消してくれた。今までのストレスを発散するかのように走りまくり、1年間の走行距離は3万3000kmにもなったそうだ。
ただ、BCNR33という彼氏と過ごす時間は楽しかったが、想像以上に大食漢で、今までのバイト代では維持することが難しい。そこで、稼げる仕事を求めて札幌に。ただただGT-Rを維持するために必死だった。
札幌の仕事に慣れ、安定した収入が得られるようになった2020年に、現在所属するSHIBATA DRIFT RACING TEAMの母体である「柴田自動車」の柴田達寛代表と出会う。最初は同社で働いていた、りんかちゃんと繋がり、その後はお互いの住まいを行き来するようになるなかで、柴田代表を紹介されたそうだ。
想像以上に蝕まれていたBCNR33の蘇生を柴田代表に託す
斬新なアイデアでさまざまな事業を手がける柴田代表に「なかなかイカれている」と思われたmeronさん。徐々に交流を深めていくなかで、BCNR33のレストアを依頼することに。
「天候問わず走っていたので、冬を越したら塩カルの影響で各部に錆が進行してしまい、相当ひどい状態でした。GT-R Magazineさんに『雪の日は乗っちゃだめ』と言われていたのですが、わたしは失敗しないと分からないので。とにかく、愛車を預けるなら柴田社長のところしかないと感じてお願いしました。そのとき柴田社長に言われたのが『できるまで来なくていいから、お前はお金を作れ』と。そのため製作過程はほとんど見ていません」
柴田自動車は部品を3Dスキャンしてデータ化。最新の金属プリンターでパネルごと交換することを考え、準備していたというが、プリンター業者が多忙となり、出力が間に合わなくなってしまった。そのため、サビていたパネルは急遽鉄板から叩き出して成型することに。その時点でイベントまで残り2カ月、すべての鈑金作業を止めて、担当者がフル稼働で仕上げたそうだ。
シバタイヤブースでR’s Meetingデビューとなったmeron号。写真をご覧いただいてわかるとおり、ボディは外装だけでなく、エンジンルームまで新車のようなフィニッシュ。ボディに時間がかかり過ぎたため、室内はほぼ未着手、エンジンも最低限の作業となってしまったそう。しかし、オーナーのmeronさんでさえ「初めは自分のクルマじゃないと思った」と語るぐらい美しさは際立っており、まさに柴田自動車の技術力恐るべしだ。
外観はノーマルだが、車高はビシッと落とされ、足元にインストールされたBBS RI-Aにシバタイヤの295サイズという極太ホイールによって、程よいクラウチングスタイルとマッシブなリヤビューを演出。キレイなクルマはカッコいいを地で行っている。
今後は上述したようにD1ドライバーを目指すmeronさん。新たな挑戦のためにすでに仕事を辞めて、単身岐阜に引っ越したという。
「悩みましたけど、一番好きなことをして生きてきたい、それはやっぱりクルマです。けど、今回はクルマよりも自分のために決断しました。決めたからにはD1に最短で行きたい。簡単なことではないのは分かっていますが、無理と口に出したら行けないから、絶対成し遂げます」
「誰かの夢になれる人になりたい」その夢に向かってD1を目指す
無謀だというのは簡単だ。だが、21歳で自分の夢のために退路を断ってここまで決断できる人がどのくらいいるだろうか!? 個人的には未来に期待しかない姿を羨ましく思えたし、挑戦する姿を応援したいというのが素直な感情だ。ただし、参戦するマシンはBCNR33ではなく、別のクルマ。R33は嬉しいときも悲しいときにも隣にいてほしい相棒だから。
最後に夢だったR’s Meetingに参加してどうだったか、と聞いた。
「前日から24時間以上動き回っていますが、パーキングにいるGT-Rを見てからテンションが上がりました。会場に来てからはアドレナリンが出っぱなしなのか、まったく疲れませんね。もちろん、今までの人生においてダントツ1番です!」
「誰かの夢になれる人になりたい」その思いを胸にmeronさんは次なる夢に突き進む。