アストンマーティンの手による「ボンドカー」復刻車、東京・日比谷に現る
アストンマーティン「DB5」のボンドカーは、『007ゴールドフィンガー』を皮切りに、現状における最新作『007ノー・タイム・トゥ・ダイ』まで数多くの作品に登場し、「世界一有名なクルマ」とも称される。
そして、アストンマーティン・ラゴンダ・リミテッド本社は「DB5ゴールドフィンガー・コンティニュエーション」と銘打った、往年のボンドカー復刻モデルの生産プロジェクトを2020年にスタート。当初の予定どおり世界限定25台が製作され、その最後の1台がアジア・パシフィック地域における初お披露目として、2022年10月末から11月中旬にかけて東京都内で一般公開された。
ほぼ完璧に復刻されたコンティニュエーションとは?
1964年に公開された映画『007ゴールドフィンガー』に出演したDB5サルーンは、映画版の007史上初めてのボンドカーとして知られる。ショーン・コネリー扮するボンドのため、英国秘密情報機関MI6の工廠部門「Q」が設えた……という設定で、じつはアストンマーティン社の旧ニューポート・パグネル本社工場内スペシャルコーチワーク部門にて特装された、文字どおりの「ワークスカー」だった。
もとより夢の超高級GTであったDB5をベースに、ヘッドライト下の機関銃や回転式ナンバープレート、レーダー追尾システム、リヤの防弾装甲、携帯発信器、煙幕/オイル散布装置、助手席エジェクト(射出)シート、対車攻撃用オーバーライダー、無線電話など当時としては夢のような秘密兵器を満載。全世界の映画ファンおよびカーマニアの度肝を抜き、今なお「世界一有名なクルマ」なる称号とともに敬愛を集めている。
いっぽう、アストンマーティン社がみずから現代に復活させたDB5ゴールドフィンガー・コンティニュエーションは、2017年に「DB4 GTコンティニュエーション」とともにスタートした「コンティニュエーションプログラム」第3弾として企画されたもの。現代的なエンジニアリングを用いながら、当時の製造方法やプロセスに忠実に従って造られる。
DB5ゴールドフィンガー・コンティニュエーションは、007シリーズの制作会社、「イーオン・プロダクションズ」社の特殊効果監督であるクリス・コーボールドOBEの監修のもと『007ゴールドフィンガー』に登場したDB5ボンドカーを、車両各部に搭載された特殊装備ともども忠実に再現している。
さすがにヘッドライト下の機関銃は、銃口のLEDがサウンドエフェクトつきで発光するダミー。3連テールランプに設けられるオイル散布装置から噴出されるのも、オイルではなく人畜無害な水となるとのことである。
しかし、ブート(トランクの英国式表記)に設けられたリヤ防弾装甲や、3つのプレートがクルクルと切り替えられる回転式ナンバープレートなどは、DB5ボンドカーの重要なアイコンとしてそのまま残されている。このため、通常のナンバープレートは取り付けられないこともあってだろうか、アストンマーティン社では登録・公道走行ともに行わないことを条件に販売するという。
つまり、通常はコレクションとして展示するか、もし走らせるとしてもサーキットなどのクローズド環境限定という、ある意味壮大なアート作品なのだ。