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いすゞ「ビークロス」は外観だけでなく中身もすごかった! ウルトラマンシリーズにも登場した奇跡のクルマとは?

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TEXT: 原田 了(HARADA Ryo)  PHOTO: ISUZU/AUTO MESSE WEB

ショーカーとほぼ同じデザインのまま“市販車”として登場

 そんなビークロスは、モーターショーでの反響も大きく、いすゞとしても大きな手ごたえを得て、1997年3月に量販モデルを発表、翌4月から販売を開始しています。なによりファンが驚かされたのはそのエクステリアデザインでした。

 1993年のモーターショーに出展されていたのはあくまでもコンセプトモデル=ショーカーで、それが市販モデルに移行する際には大きく手直しされて発表されると思われていました。ですがビークロスはショーカーとほぼ同じエクステリアデザインのまま、市販車として登場したのです。

“ボディ上下二分割”のアイデアが市販モデルにも再現

 もう一度、エクステリアについて紹介しておきましょう。ボディのアウターパネルは亜鉛メッキを施した鋼板をプレス成型して使用しています。そのアウターパネルに、ボディ下半身を覆う高強度なポリプロピレン系樹脂を無塗装のままボルト止めして使用しています。ショーモデルで提案されていた“ボディ上下二分割”のアイデアが市販モデルにも再現されていたのです。

 リヤドア内にテンパータイヤを収納するというショーモデルのアイデアも、市販モデルのビークロスに再現されていました。クロカン4WDと言えばスペアタイヤを背負っているのが一般的でしたが、リヤドア内に収納することで、今までにはない強烈なインパクトを放つことになり、大きな特徴となりました。

 搭載されたエンジンはショーモデルから一転、ビッグホーンに搭載されていた3165cc(ボア×ストローク=93.4mmφ×77.0mm)V6ツインカム(4カム)の6VD1をチューニングし直して搭載。吸気ポートの長さをエンジンの回転数によって切り替える可変慣性吸気システムや、吸排気バルブを立ててストレートポートを採用し充填効率を高めるなどした結果、最高出力が200psから215psにパワーアップすると同時に、最大トルクも27.0kg-m/3600rpmから29.0kg-m/3000rpmと、より低回転域で太いトルクを捻り出すようになっていました。

 各部のコンパクト化や軽量パーツの使用により、6VD1のベース仕様に比べてエンジン重量の約10%の軽量化も実現していました。

オールラウンドなサスペンションを採用

 一方でシャシーに関してもショーモデルとはいくつかの相違点が見られました。まずはサスペンション。フロントはコイルで吊ったダブルウィッシュボーン式で、基本的なデザインは踏襲されていましたが、リヤはリジッドアクスルをコイルスプリングで吊りながらリンクでコントロールする4リンク式としています。ラテラルロッドのブッシュをピロボール化するとともに、ラジアスロッドのプッシュも強化品を使用するなどスポーツ領域でのスタビリティを高めていました。

 またアルミ製モノチューブで別体タンクを備えたダンパーを採用しスプリングやスタビライザーなどを強化するとともに、適正化を進めオールラウンドなサスペンションとしていました。ブレーキも4輪にベンチレーテッド・ディスクを奢るとともに4センサー3チャンネルのABSも装着。

 クロカン4WDのキモとなる4輪駆動システムに関しては、トルク・オン・デマンド(TOD)と呼ばれる電子制御トルクスプリット4WDを採用。前後輪のトルク配分を0:100(後輪駆動)から50:50(直結4WD)まで無段階に自動制御できました。

 またシフトオンザフライ・システムを採用することで、走行中でも2輪駆動と4輪駆動を自由に切り替えることが可能となっていました。まるでショーカーそのもののようなスタイリングが注目を集めていたビークロスですが、メカニズム的にも様々な最新技術が盛り込まれていたことが分かります。

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  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • ライター。現在の愛車は、SUBARU R1、Honda GB250 クラブマン、Honda Lead 125。クルマに関わる、ありとあらゆることの探訪が趣味。1955年、岡山県倉敷市生まれ。モータースポーツ専門誌の地方通信員として高校時代にレース取材を開始。大学卒業後、就職して同誌の編集部に配属。10年間のサラリーマン生活を経て90年4月からフリーランスに。モータースポーツ関連の執筆に加え、オートキャンプからヒストリックカーイベントまで幅広く取材。現在ではAMWに、主にヒストリー関連コラムを執筆。またライフワークとなった世界中の自動車博物館歴訪を続け、様々な媒体に紹介記事を寄稿している。
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