同サイズボディに広めな室内のファミリー志向「ウィッシュ」
さて、ホンダ・ストリームが彗星のごとく姿を現したのだとすると、トヨタ「ウィッシュ」は、ある意味で衝撃的な登場を果たしたクルマだった。
なにしろ2003年に、初代ホンダ・ストリームとは、驚くべきことにまったく同一のボディサイズで登場してきたからである。全長×全幅×全高はウィッシュが4550×1695×1590mm、ストリームもなんと4550×1695×1590mm(いずれもFF車、4WD車は全高が5mmだけ違う)。ホイールベースはストリームの2720mmに対しウィッシュは2750mmと30mm長い。しかし、それにしてもクラスもコンセプトも同じくするモデル同士であるとはいえ「よくもここまで!」と感心させられるほどの数字の重なり方。これはもう、話題作りか何かを目的にあえてそうした……としか思えなかった。
じつは初代ウィッシュは登場時に開発エンジニア、デザイナーなどに取材をする機会があり、もちろんチーフエンジニアの吉田 健さんにもインタビューをした。だが、(今でも鮮明に覚えているのだが)インタビューの場で顔を合わせるなり「わかってるよね、ボディサイズの件はわざわざ話題にしなくていいからね」と、無言のうちのメッセージ(プレッシャー?)を受け取ったような気がして、そのインタビューで筆者はついに「その件」を問いただすことができなかった。いずれにしても、すべての国産車のスペックが頭の中にあるわけではないが、かなり珍しいケースだったことは確かだ。
ウィッシュだが、もちろん3列/7名乗り(6名乗りのグレードもあった)のシート配列、ゲート式のインパネシフトなど、インテリアも酷似した造りだった。ただし数値で追うと、ウィッシュはストリームに対して室内高は同じ1310mmだが、室内長は60mm長く室内幅は20mm広く、フロントシートの座面幅は10mmだけ幅広い……と要所要所で数値を上回らせていた。室内寸法は計測方法、実際の印象が重要で数値はあまり意味をもたないとはいえ、さすがトヨタ! といえる采配だったというべきか。
さすがトヨタ、の部分ではウィッシュにはオーバーフェンダーを装着し全幅を1745mmとしたスポーティグレードの「2.0Z」があった。このグレードは6名乗りだったが、ちょっとコダワリ派のユーザーの心をくすぐるグレードだった。とはいえ総じてスポーティ指向のキャラクター、走りのストリームに対して、あくまでもカローラの延長といったファミリーカーとして万人から支持された商品性の高さは、「後出し何とか」ではあったがウィッシュのポイントだったのである。