「Sクラス」をクーペとした至高の「560SEC」
1979年に登場したメルセデス・ベンツのW126型「Sクラス」は、当時のハイクラスな人々から絶大な支持を受けていた。ボディタイプも豊富で、標準ホイールベースの「SE」に加えてロングホイールベースの「SEL」があり、このSELにV型8気筒5.6Lエンジンを搭載した「560SEL」は、バブル期の都内でもよく見かけたクルマだった。
1981年には、このW126型をクーペボディとしたC126型が登場する。今回ドイツ・ミュンヘンで開催されたRMサザビーズオークションに出品されたのは、1990年モデルのメルセデス・ベンツ「560SEC」であるのだが、ただの560SECではない。
AMGでエンジンをチューニング
このクルマは、1990年5月に製造されたのち、AMGでエンジンの換装やボディカラーの変更などを受けたもので、正式な車名はメルセデス・ベンツ「560 SEC AMG 6.0」となるものだ。
当時のAMGというと、ワイドなフェンダーをはじめとする攻撃的なスタイルが特徴なのだが、この個体はあくまで素のC126型のシルエットを保っている。
そんなすっきりとしたブルーブラックメタリックのボディに搭載されているエンジンは、V型8気筒のM117型エンジンのブロックに、M119型エンジンのシリンダーヘッドをベースとして、AMGがチューニングを施したもので、最高出力380psを発生するV型8気筒6.0LのM117/9型だ。速度計は、AMGのレターが入った300km/hスケールに変更されている。
憧れたディッシュタイプのホイール
エクステリアは、小ぶりなエアロパーツを装着しているとはいえ、ほぼS126型のままとなっており、ホイールはAMGのエアロIIIに交換されている。ブラックアウトされたスリーポインテッドスターは、当時の、つまりメルセデス・ベンツ傘下となる前に採られていたAMGの手法そのもの。
ブラックレザーのシートは、前席には若干のヤレが見受けられるが、後席の状態は良く、ピラーレスでサンルーフ付きの高級クーペというイメージを保っている。
そんなメルセデス・ベンツ 560 SEC AMG 6.0は、2022年11月26日にオークションがおこなわれ、11万7300ユーロ(邦貨換算約1670万円)での落札となった。この価格は、昨今のヤングタイマー車の価格高騰という視点から見れば、比較的落ち着いたものといえるだろう。
メルセデス・ベンツは、ヤングタイマーモデルの維持にも力を入れていて、部品供給状況なども徐々に改善してきている。そのため、これからメンテナンスをしながら大事に乗っていく、ということも可能だろう。懐に余裕がありさえすれば、手に入れたいクルマのひとつである。