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100年前にティアドロップ型のクルマが作られていた! 貴族がワンオフで作らせた最初期の「アルファ」を紹介します

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TEXT: 長尾 循(NAGAO Jun)  PHOTO: 長尾 循/Stellantis

アルファ史上有数の大排気量モデル「40/60HP」

 ここで話を再び第一次世界大戦直前に戻す。歴代のアルファ/アルファ ロメオの中でもとりわけ大排気量のモデルとして知られる「40/60HP」が登場したのは1913年のこと。直列4気筒OHVエンジンのボア×ストロークは110×160mmで、排気量はじつに6082cc。通常の仕様で70馬力を発生したと言われる。ロードカーとして作られたモデルだったが、その大排気量が生み出すパワーを活かしたレーシングマシンも作られてサーキットでも活躍したのも、いかにもアルファ ロメオらしいエピソードだ。

 生産台数はわずか27台といわれるアルファ40/60だが、トーピード・ボディのロードカーとスパルタンなレーサーの他に、ワンオフボディをまとったスペシャルなモデルが存在し、それはイタリアではミニカーの題材になるほどの存在だ。それがこのアルファ40/60HP“リコッティ”である。

空力ボディ(?)で速度アップを果たした“リコッティ”

 自動車の大量生産が始まる前、メーカーがエンジン/ラジエター、スカットルとシャシーだけのクルマを販売することは普通であった。現代の路上でもキャブとシャシーだけの状態でボディ架装メーカーに陸送されるトラックを見かけるが、それにも似た「分業」の時代だった。

 カロッツェリア・カスターニャといえば、1849年にミラノで創業した老舗馬車メーカーだったが、20世紀が始まる頃には自動車ボディの製造にも進出。やがて同社は同郷に創設されたアルファのボディの架装も手掛けるようになる。そして、そのカロッツェリア・カスターニャのパトロンでもあったイタリア貴族マルコ・リコッティ伯爵のオーダーによって1914年に作られたワンオフモデルが、このアルファ40/60HP“リコッティ”だ。

 アルファ40/60HPの4座トーピード・ボディの上に架装されたアルミ製のボディは、まるで飛行船か潜水艦を思わせる流線型。その独特の姿から“シルーロ(魚雷)”というニックネームでも呼ばれた。空力学などがまだ未発達だった当時のことゆえ、そのボディは視覚的・感覚的な造形だったはずだが、実車の最高速度はノーマルのトーピードに対し、14km/hアップの時速139kmを記録したという。このアルファ40/60“リコッティ”は、イタリア・ミラノ郊外のアルファ ロメオ歴史博物館に、当時の資料をもとに再現された復元車が展示されている。

* * *

 機械文明の精華である最新鋭の自動車と、伝統的なカロッツェリアの技術との融合によって生まれたアルファ40/60“リコッティ”は、まさに欧州貴族文化の残照ともいえる孤高の1台なのだ。

■イタリア リオ製 アルファ40/60″リコッティ” 1/43スケール
品番:RIO4284-2 or RIO4284
定価:1万4300円(税込)
問い合わせ:サンリッチジャパン

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  • 長尾 循(NAGAO Jun)
  • 長尾 循(NAGAO Jun)
  • 1962年生まれ。デザイン専門学校を卒業後、エディトリアル・デザイナーとしてバブル景気前夜の雑誌業界に潜り込む。その後クルマの模型専門誌、自動車趣味誌の編集長を経て2022年に定年退職。現在はフリーランスの編集者&ライター、さらには趣味が高じて模型誌の作例制作なども手掛ける。かつて所有していたクラシック・ミニや二輪は全て手放したが、1985年に個人売買で手に入れた中古のケーターハム・スーパーセブンだけは、40年近く経った今でも乗り続けている。
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