バブル期の「小ベンツ」
W201型のメルセデス・ベンツは「190E」という呼びかたをされるのが一般的だ。バブル期には「小ベンツ」、なんて言いかたをされていたこのモデルは、日本だけではなく世界的な大ヒットモデルとなった。
DTMで勝利するために生まれた「エボ2」
その190Eをベースに、メルセデス・ベンツはDTM(ドイツツーリングカー選手権)に参戦。ライバルはBMW「M3」やフォード「シエラ・コスワース」。当初は190Eに4気筒2.3L16バルブエンジンを搭載した、「190E 2.3-16」での参戦だったが、1990年には2.5Lエンジンを搭載した「190 E 2.5-16 Evolution」(以下エボ1)で参戦。
ライバルのM3も2.5Lエンジンを搭載した「M3スポーツエボリューション」を、アウディは「V8クワトロDTM」を登場させることで、ワークスマシンは三つ巴の戦いを繰り広げた。
そこで確実な勝利を得るために、メルセデス・ベンツが登場させたのが「190E 2.5-16 Evolution II」(以下エボ2)というマシンである。このころのレギュレーションは、500台以上市販されたモデルをベースとしたマシンで参戦せねばならず、かつ、ベース車からの改造範囲が制限されていた。そのためベース車自体にレーシングマシンに要求される性能を盛り込めば盛り込むほど、勝利に近づくことができた。
このエボ2は、エボ1と同じ排気量のエンジンを搭載しながら、より高回転型とすることで230psから235psへとパワーアップを実現。トランスミッションはギヤ比を変更し、サスペンションのセッティング変更やブレーキシステムのグレードアップをおこなっている。
さらに大きい変更が、ハイマウントリヤウイングに代表される、エアロパーツの刷新。ワイドなフェンダーとともに、派手さを感じさせるこのエクステリアデザインは、あくまでもレースに勝つために採用されたものだった。
コレクターズアイテムとして最適の1台
今回ドイツ・ミュンヘンで開催されたRMサザビーズオークションに出品されたこの個体は、シリアルナンバーが263/502というもの。1990年5月に製造され、当初はディーラーで展示されていたのだが、1991年3月に販売されている。
その後ふたりオーナーが代わり、2010年6月、3代目のオーナーが亡くなって、今回の出品者の手に渡っている。総走行距離は3万7300kmと少なく、保管状態もよかったようで内外装ともに、高クオリティを保っている。さらに整備記録簿や販売書類、取扱説明書、登録書類も付属している。
そんな190E 2.5-16 エボ2、落札価格は36万5000ユーロ(約5170万円)だった。希少性と状態の良さを考えれば、当然といっていいのだろう。
DTMはこのあと、1991年と1992年には190Eエボ2とM3スポエボ、アウディV8クワトロが、1993年には190Eエボ2とオペル「カリブラ」、アルファ ロメオ「155V6Ti」が熾烈なチャンピオン争いを繰り広げる。そんな中で数多くのタイトルを獲得した190Eエボ2の魅力は、いまも色あせていないのだ。