押す? 引き上げる? 倒す? 6速MT時代のバック事情
しかし、そんな特殊な事例以外にも、どうなってるんだ? と思うMTのシフトがある。それは「R(リバース)」ギヤの位置だ。一般的に多い5速MTのRギヤは、5速の位置よりも右側下にある。しかし、6速MTが一般的になってきてから、Rギヤの位置はトランスミッションごとに違ってきた。たとえばスバルなどでは、それまでと同じようにRギヤは右側下にありつつも、そのままではRにシフトはできず、ロックリングを引き上げながら操作をすることで初めてRにシフトできるようになっている。
マツダは1速のさらに左の上側にRギヤがあるが、これも普通に操作をすると1速に入るだけ。Rに入れるためには、シフトノブを下に押し込んでから1速よりもさらに左にシフトレバーを操作しなければならない。
ホンダの「シビックタイプR」のRギヤ位置は、6速よりもさらに右の下側にあるが、そこに入れるためにはシフトレバーをぐいっと右側へと倒す必要がある。最も入れやすい方法は、5速や6速にシフトするところまでレバーを倒したら、そこからさらにぐいっと右側へと、結構な力でレバーを倒し、下側へ動かすという方法だ。同じ位置にRがあるアルファ ロメオ「156」の6速仕様(V6エンジン)は、ロックリングを引き上げてRへとシフトチェンジする方式を採用している。
このように、さまざまなRへの入れ方が存在するのは、誤操作を防ぐためだ。左上にRギヤポジションがあるクルマは、1速のつもりでRに入れないようにするためロックを設けており、右下にRがあるクルマは、走行中はRには物理的に入らないにしても、シフトミスを防ぐため、あえて力を加えたり、ロックリングを設けている。
こういったさまざまなRの位置は、シフトパターンの表記を見なければわからない。車検的には、シフトパターン表記がなければ不可、ということになっている。純正シフトノブにはパターン表記があるので問題ないが、社外品のシフトノブに交換している場合には、あらためてシフトレバー周辺にパターン表記を設けておかなければならない。
5速時代なら、そんなものなくたってわかるよ、という感じだったが、いまは無理。初めて乗るクルマのR位置がわからない時は、表記を見て位置を確認し、その上でロックリングの引き上げか、シフトノブを押し込む、あるいはぐいっと力で、というのを試していけば、首尾よく後退できるはず。もし表記が見つからない時は、上記の位置と方法をすべて試せば、どこかで正解にたどり着けるだろう。