クリエイティブ・ムーバー第2段として登場した
1990年代の初頭、倒産の危機さえ伝えられたホンダを救ったのは、クリエイティブ・ムーバー=生活創造車と呼ばれる新企画による一連の車種群だった。
筆頭は、ミニバンのオデッセイである。ミニバンではほかに、ステップワゴンもこの時期に誕生するのだが、クリエイティブ・ムーバー第2弾がCR-Vだった。
当時、消費者の人気を集めたのは、レクリエイショナル・ヴィークル(RV)と呼ばれる4輪駆動車で、三菱パジェロやいすゞビッグホーンが主役だった。これに対し、ホンダは悪路走破を得意とする4輪駆動車を持たず、米国のジープ・チェロキーを販売店で売るほどで、苦戦していた。そこに登場したのがCR-Vである。
乗用車のように気軽に扱え人気を得た
クリエイティブ・ムーバー開発の基本となったのは、シビックやアコードといった乗用車であり、他社のRVのような商用車やトラックを基にしたつくりではない。CR-Vも、つくりの基本となったのは同じ年にモデルチェンジによって6代目となったシビックであり、パジェロやビッグホーンに比べると、今日のSUV(スポーツ多目的車)に近い。
4輪駆動(4WD)の方式も、前輪駆動(FWD)を基本に、タイヤの滑りなどを検知すると後輪へも駆動力を伝達するデュアルポンプ式とホンダが名付けたもので、過酷な未舗装路での走行には向かなかった。それでも、RV的な外観と、4WDであるという安心感、そのうえで日常的に使う上では乗用車のように気軽に扱え、乗り心地もよいというので、たちまち人気を得た。
同じような車種として、トヨタからはRAV4が誕生している。そして、CR-VとRAV4は、競合として日米で競い合うことになるのである。
米国の暮らしや余暇にうってつけのクルマだった
米国にも、SUVはあった。だが、CR-VやRAV4のように、乗用車的な快適性を備えながら4WDであることによる安心を手に入れられる車種はまだなく、国産両車の人気は米国でいっそう高まった。というのも、米国では、日本で感じる以上に未舗装路を走る機会は多く、都市を離れると自然豊かな景色や道になり、最低地上高のゆとりや4WDの威力を味わうことができる。それでも、いわゆる悪路というほど過酷な走行は必要としないことが多いので、CR-VやRAV4は、まさに米国の暮らしや余暇にうってつけのクルマとなったのだ。
そうした米国での人気を受け、CR-Vは2代目から3ナンバー車となる。そして、3代目では車幅が1.8mを超えるようになり、国内ではやや持て余す大きさとなった。RAV4も同様に大型化していき、CR-VもRAV4も、国内での販売を一時中断することになるのである。
そこに登場したのがヴェゼルだ。また、国内においても輸入車の大柄なSUVが売れ出し、CR-Vも2018年に5代目が再び国内で販売されることになったが、今年8月には生産を終えた。
クリエイティブ・ムーバー=生活創造車という、人の暮らしを中心とした斬新な企画によってホンダの窮状を救ったCR-Vであったが、米国中心の商品企画へ転換していくに従い、国内での人気は薄れていったのであった。