フォルクスワーゲンの流麗なクーペ「カルマンギア」
「若者のクルマ離れ」なんて言われていたのも今は昔。近年はまた、20歳前後でクラシックカーやスポーツカーに乗る若者が増えてきている。2002年生まれの「がくと」さんは現在20歳。2022年春に社会人になるや、さっそく大人のローンを組み、1970年式フォルクスワーゲン「カルマンギア」のオーナーとなった。いかにして半世紀以上も昔のクルマにたどり着いたのだろうか。
小学生の頃から友だちと一緒に「ワーゲン」にハマる
秋晴れに恵まれた取材日、がくとさんが運転する赤いカルマンギアとともに遊びに来たのは、お父さんの1974年式ビートルに乗った「あきら」さんと、今はまだ学生だけれど就職したらワーゲンに乗りたいという「ひろと」さん。3人は小学生の頃からの友だちで、一緒にクルマのゲームをしたりして育ってきた仲だ。
元はといえば、あきらさんのお父さんがビートル乗りで、小さいときからクラシックVWのショップやイベントに連れて行ってもらっていて、本人もクルマといえばワーゲン! な体質に。そんなあきらさんからワーゲンの素晴らしさを力説され、映画『ハービー』や雑誌などワーゲンにまつわるカルチャーに触れているうちに、がくとさんもすっかり「ワーゲン病」に感染。一緒にイベントにも足しげく通う、熱心なワーゲン好き少年となったのだった。
クラシックVWには代表選手のビートル(タイプ1)やバス(タイプ2)など多くのバリエーションが存在するなか、がくと少年は小学6年生の時点で、イタリアのカロッツェリア・ギアがデザインした流麗なクーペ、カルマンギアに惚れこんだ。
「何度見ても飽きない美しいシルエットや気品に心を打れました。でも決して速いクルマではなく、非力なところもまたギャップがあって好きです」
「旧き佳き」がライフスタイルの中心
ドイツの工業技術とイタリアのデザインが融合したカルマンギアに出会ったことは、がくとさんのクルマ以外の趣味にも少なからず影響をおよぼしたようだ。
「ワーゲンにハマったのと同時期にビートルズにもハマり、ギターを独学で始めました。高校生のときにはジョージ・ハリスンが使っていたのと同じモデルのギター(1966年製)を所有していたこともあります。やがて古い機材の音が好きだと気づいて、ビンテージのアナログシンセなどをよく使っている星野 源の楽曲を聴き始めるようになりました」
また、数年前から友人の影響でフィルムカメラ沼、オールドレンズ沼にもハマってしまったとのこと。ファッションについてもユーロ系やロンドンファッションが好きで、ヨーロッパ古着を着ていることが多いというがくとさん。
「おそらく、“旧き佳き”が自分のライフスタイルを担っているんだと思います」