「GT」と並んで「速そうな車名」の代表選手が「RS」
クルマのネーミングでよく見かける「RS」という記号は、いったい何なのか。個人的なイメージでいえば、RSと付いていると元気に走ることができるモデル、といった感じだし、実際そういうモデルも多かったりするのですが、じつは同じRSと付いたモデルでも、速さとか過激さというよりも、気持ちよさを重視したものもあったりします。そこで思いつくままに、RSと名付けられたクルマの個性を見ていきましょう。
初代「シビックRS」は「ロードセーリング」!?
そもそもRSとはなんの略なのか、というのも問題だったりします。イメージするにロードスポーツとかレーシングスポーツ、という感じを受けがちだし、そういった意味合いでネーミングしているモデルも多いのですが、あえて別の意味を持たせているものもあったりします。
国産車で最初にRSと名付けられたのは、初代ホンダ「シビック」のRSではないかと思われます。1974年に登場した「シビックRS」は、標準モデルが66psで4速MTだったのに対して、76psの5速MTとして発売されました。サスペンションもRS専用品を装備した、元気に走ることができるモデルがこのシビックRSです。
この場合のRSとは「ロードセーリング(Road Sailing)」の略であると、ホンダは公表しています。しかし、当時父親がケンメリ「スカイライン」に乗っていた、クルマ好きのスーパーカー世代の子どもだった筆者は、そんなのウソだ、となんの根拠もなく思っていました。実際、なんの根拠もない与太話ではあるのですが、ホンダという会社の当時の話をのちに聞くことになって、別の意味もあったんじゃないのかなぁ、と思ってしまった、というのも事実です。
「ナナサンカレラ」はじめドイツ勢は「レンシュポルト」
次にRSといって思い出すのは、アウディのRSシリーズ。たとえばA4を例にとると、A4はベースモデル、スポーツモデルはS4、そしてRSはハイパースポーツという位置づけとなっています。もともと、アウディ「クワトロ」がWRCを席巻したのちのモデル、80シリーズで登場した「RS2」というクルマが、アウディRSの生い立ち。その後アウディのRSはレーシングモデル的な位置づけのものとしてラインアップを増やしてきました。このRSは「レーシングスポーツ」、ドイツ語でいうところの「レンシュポルト(RennSport)」という意味で使われています。
そのレンシュポルトと、スーパーカー世代としてのRSで忘れてはいけないのは、ポルシェの「ナナサンカレラ」。1973年の「911カレラRS2.7」は、ベースモデルの「911S 2.4」から排気量を増やしてパワーアップし、さらに各部をロードモデルとは違うサーキット走行に適したものとすることで、当時開催されていたグループ4レースのホモロゲーションを取得するためにつくられたもの。当初500台の限定販売ということだったらしいのですが、あまりの人気から1000台程度追加生産されたそうです。いま思えば、限定生産という言葉に心が持っていかれてしまうようになったのは、このナナサンカレラがきっかけだったのかもしれません。
「メガーヌ」や「ルーテシア」だと「ルノー・スポール」
同じRSでも、若干意味が違うのが、ルノーの「R.S.」です。この場合のRSは、「ルノースポール(Renault Sport)」というブランドを表しています。いまはアルピーヌと統合されてしまったルノースポールですが、かつてはルノーのコンペティション部門として活動をしていました。本来社外で活動していたチューナーであるゴルディーニや、アルピーヌを買収し、社内部門として立ち上げたのがルノースポールなのです。その名を冠した例えば「メガーヌR.S.」や、「クリオ(日本名ルーテシア)R.S.」は、それぞれのモデルのスポーツバージョンとして開発されたものとなっています。