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ホンダ「エディックス」の「川の字」レイアウトは失敗だった!? BMWより10年先を行っていた先進的ミニバンとは

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TEXT: 島崎 七生人(SHIMAZAKI Naoto)  PHOTO: 島崎七生人/日産自動車/Stellantis

ミニバンブーム最盛期の2004年にホンダが送り出した「エディックス」

 ちょうどこの原稿の準備を進めていたとき、用事ができ自宅近くのホームセンターへ買い物に出かけると、道で当方のクルマの前をホンダ「エディックス」が走っているのを偶然見かけた。ブラックのボディカラーで引き締まって見えたものの、コンパクトなのに幅広なこのクルマの「縦横比」は今見てもやはり独特。ボディ側面が比較的立っていることもあり、後ろから眺めると、ズッシリとした構えが他車とはひと味違う雰囲気を醸し出している。

じつは連綿と連なってきた「前席3人乗り」の系譜

「3×2(スリー・バイ・ツー)」と言われて、それがクルマのシート配列だとピンと来る人はそう多くないかもしれない。まあ昔の前席がベンチシートのセダンやワンボックスのバンで前席が「3人掛け」のパターンは存在したため、決して珍しいというほどではない。もっといえば、ゴードン・マレーのマクラーレン「F1」(1992年)や最近では「T.50」、あるいはマトラ・シムカ「バゲーラ」(1973年)、タルボ・マトラ「ムレーナ」(1980年)といったスポーツカーで「3×1」という例もあった。

 エディックスの登場は2004年7月のことだったが、それよりも前、1998年12月には日産からやはり前席3人乗りのミニバンである「ティーノ」が登場。同じ頃、フィアット「ムルティプラ」も日本市場に導入されていた。けれどすでに歴史が証明しているように、このエディックス、ティーノ、ムルティプラの「横3列シートのトリオ」は、いずれも決して商業的に成功したクルマとはいえなかった。余談だが筆者はどちらかというと「マイナーなクルマ好き」で、エディックス、ティーノ、ムルティプラの各車へは、登場時から好意をもっていたが、案の定……といったところ。ひと癖という言葉があるけれど、個性の強さゆえに一般受けしにくかったといえばいいか。

工夫がたっぷり詰めこまれた「V字シートレイアウト」

「オデッセイ」、「ステップワゴン」、「ストリーム」とミニバンのヒット作を続々と輩出したホンダから、上級方向の「エリシオン」に続いて登場したエディックス。開発の狙いは「幹から枝分かれした新しいファミリーカーの模索」だった。そこで7代目「シビック」をベースとしながら、既存のクルマにはない個性として、「川の字になって親子が寝る」ところが発想の原点だったという、横3人掛け×2列のシート配列が誕生した。

 2004年7月の最初のカタログでは、「V字シートレイアウト」と呼ぶ、前後で中央席を後方にオフセットさせV字型にしたことで実現した横3人掛け×2列を象徴したマークを表紙にあしらい、開くと「!」マークの中に子どもの姿が現れ、さらにもう1ページめくると、3人掛けの親子が現れる……そんな構成になっている。横3座が独立したシートは欧州のピープルムーバーでは珍しくないが、エディックスのそれは中央席のスライド量を大きくとり(フロント270mm、リヤ170mm)、フロント席はリヤモースト(最後端)でチャイルドシートの装着も可能としていた。

 もちろん折り畳みが自在なシートは多彩なアレンジに対応。カタログには前後中央席を畳めば長尺物が載せられる「ロングモード」などが紹介されている。エスプレッソと呼ぶ茶系のシート表皮では、後席3脚のうちの中央席と左右席の表皮色(色の濃さ)を微妙に違えてあるといった小技も。

 小技といえば前列中央席の座面は反転させるとテーブルに早変わりしたり、インパネ中央部には格納式になった3本分のドリンクホルダーが備わっていたりといった工夫もあった。前席中央部フロアはトンネル状になっていたが、その運転席側には小さなフットレストが備わり、中央席乗員の右足が運転手に干渉してしまうのを防ぐ配慮もされていた。

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