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オバフェン武闘派マツダ「ファミリア」があった! ランチア「デルタ」に負けない迫力の「ファミリアSPORT-4」とは

1989年マツダ・ファミリア SPORT-4の走り

ファミリアとは思えぬコンペティションぶりに驚愕

 モーターショーにはコンセプトカーと呼ばれるショーモデルが参考出展されることが多くあります。それは単に“広告塔”として来場者の関心を呼ぶためのものもありましたが、将来的な市販を考えて製作されたモデルも少なくありませんでした。

 今回はそんなコンセプトカーでマツダの世界ラリー選手権参戦活動をイメージさせた1台、1989年の東京モーターショーに出展されたマツダ「ファミリアSPORT-4」を振り返ってみました。

レースで活躍していたファミリア

 ファミリアはマツダとして初の小型乗用車で、1963年に初代モデルのバン=商用車が登場。それをベースにしたワゴン=乗用車、4ドアセダンとラインアップを充実させていきました。セダン系はアクセラを経て現在はマツダ3へと車名が変わっていきましたが、商用モデルのバンはトヨタからプロボックスのOEM供給を受けている現在もファミリアを名乗っていて、モデルライフはキャロルに次いでマツダで2番目の長さを誇っています。

 1980年に登場した5代目では、それまでの後輪駆動(FR)から前輪駆動にコンバート。横置きエンジンとトランスミッションを一直線につなぐ、いわゆるジアコーザ式のレイアウトを継承しました。1985年に登場した6代目では1.6Lのツインカム・ターボをラインアップし、さらに日本初となるフルタイム4WD採用モデルを追加投入しています。

 初代モデルのファミリア・クーペで1967年のシンガポールGPに参戦し優勝。2代目のファミリア・ロータリークーペでは1969年のシンガポールGPで優勝を飾るとともに、同年のニュルブルクリンク84時間“マラソン・ド・ラ・ルート”やスパ-フランコルシャン24時間などの耐久レースで健闘するなど、レースでの活躍が目立っていました。

「闘争本能を刺激する」ような戦闘的なルックスに変身

 そんなファミリアですが、フルタイム4WDと1.6Lのツインカム・ターボを手に入れた6代目では世界ラリー選手権(WRC)への挑戦を開始しています。

 ベルギーに本拠を構えるマツダ・ラリー・チーム・ヨーロッパ(MRT-E)によって、RX-7の後継マシンとして1987年からグループAカテゴリーで参戦を開始。同年のスウェディッシュ・ラリーで初の総合優勝を飾っています。

 MRT-Eのマツダ323 4WD(国内での車名はマツダ・ファミリア)がスウェディッシュ・ラリーで2勝を飾った1989年の2月に、ファミリアはフルモデルチェンジを受けて7代目に移行。WRC参戦を前提にベースモデルとして当初からGT-Xがラインアップされていましたが、1.8L(ボア×ストローク=83.0mmφ×85.0mm)の直4ツインカム16バルブ+ターボで最高出力は180psのBPエンジンを搭載しています。

 シャシー関係ではセンターデフのデフロックが廃されビスカスLSDが組み込まれ、また同時にリヤデフもビスカスLSDが純正装着されていました。さらに1992年にはインタークーラーをサイドからフロントに移設し、さらなるパワーアップが図られたGT-Rが投入されています。

 こちらの最高出力は210psにも達していました。ちなみに、GT-Xをベースにした競技モデルとしてGT-Aが用意され、GT-RをベースにしたGT-Aeがその後継モデルとされていました。市販モデルは、このように変化(進化)していきますが、7代目が登場した1989年の東京モーターショーに参考出品されたコンセプトカーが、今回の主人公となるマツダ・ファミリアSPORT-4です。

 ベースとなったのは7代目ファミリア4WDの3ドアハッチバックですが、『闘争本能を刺激する』ことがコンセプトのひとつとなっていました。フローティング式のド派手なリヤウイングと大きく張り出した前後のブリスターフェンダー、クーリングエア用に大きなダクトが設けられたフロントのバンパースポイラーを装着。さらにボンネットにもホットエアーを排出するエアアウトレットを切り欠くなど、極めて“戦闘的”なルックスに変身していたのです。

コンセプトは「操る楽しさを純粋に追求したオンロード・ファイター」

 ファミリアSPORT-4のルックスは過激なまでに“戦闘的”でしたが、もちろん中身も十分に“戦闘的”でした。エンジンはベースモデルと同様に1.8Lの直4ツインカム16バルブ+ターボですが、大型のターボチャージャーに交換するとともに、インタークーラーの搭載位置を最適化するなどチューニングを進めた結果、最高出力は220psにまでパワーアップされていました。

 サスペンションも、4輪ストラットタイプという基本デザインには変更ないものの、トレッドを拡大(1445mm/1435mm→1490mm/1495mm)するためにストラットと組み合わせるロアアームを20mm延長。ホイールを8J-16にサイズアップして225/45ZR16というワイドなPIRELLI P700-Zタイヤを装着しています。

 またブレーキに関してもアルミ合金製の対抗4ピストン・キャリパーとピンホール付きの大型ベンチレーテッド・ディスクを4輪に装着。4WDシステムのキモとなる駆動系は、バリアブル・トルクスプリットの前後トルク配分をベースモデルと同様の43:57として強力なトラクションとコントロール性を高い次元で両立させています。ラリー車のイメージが漂うインテリアは、機能を優先して適度にコンペティティブでありながらもスパルタンに過ぎない、程よいまとまり感が漂っていました。

 具体的にはベースモデルのダッシュボード・フレームを利用しながらも、メーターナセルにはドライバーの正面に2連の大径メーター(右に200km/hまで刻まれたスピードメーター、左には1万回転まで刻まれたタコメーター)が装着され、その左右には5つの小径メーターが配されており、まさに『操る楽しさを純粋に追求したオンロード・ファイター』のコンセプトを具現化させたインテリアとなっていました。

65mmも拡幅された全幅

 最後になりますがファミリアSPORT-4のスペックを紹介しておきましょう。まずボディサイズですが全長×全幅×全高とホイールベースはそれぞれ4070mm×1740mm×1460mmと2450mmでベースとなった7代目ファミリア4WDの3ドアハッチバック(4030mm×1675mm×1390mmと2450mm)と比べると、オーバーフェンダーによって65mmも拡幅された全幅の違いは明らかです。

 ただし重量的には1160kgでベースモデルと同じになっています。これは超軽量のカーボンファイバー(CFRP)製のボンネットなど、剛性を確保しつつ軽量化を徹底的に追求した新素材の採用が大きく関わっているようです。

 その結果、動力性能も高いレベルに引き上げられていて、0−400mの発進加速が14.0秒、0−100km/hの発進加速が6.0秒、そして最高速は220km/h(データはいずれも目標値)となっています。またこうしたコンセプトカーでは実走が不可能なモデルも少なくないのですが、ファミリアSPORT-4は実走も可能で、発表された直後には、さまざまな媒体でインプレッションが行われていたようです。現存するかは不明ですが、可能なら一度は乗ってみたいクルマに違いありません。

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