若者向けにリリースした「YRV」
人気の高い軽自動車を多くリリースする一方、普通車の方はやや影が薄い印象が否めないダイハツ。そんなダイハツが2000年8月にリリースしたセミトールワゴンが「YRV」だった。
当時、販売中だったストーリアをベースに背の高いパッケージのボディを組み合わせたもので、キャラクター的にはムーヴの普通車版といったところ。
しかし当時のダイハツはなぜかYRVにクラストップの140psという出力を誇る1.3Lターボエンジンを搭載してしまったのだ。にもかかわらず、トランスミッションは4速ATのみで(NAモデルには5速MTも存在)、ガラスルーフを備えた「パノラマパック」もターボモデルにのみ設定していた。
足まわりはスポーティな味付けが印象的だった
その一方でもっともベーシックなモデルはわずか64psの直列3気筒の1Lエンジンで、1.3LのNAモデルは90ps。NAエンジンモデルはコラムシフトのフロントベンチシートとなる一方で、ターボモデルはフロアシフトのセパレートシートだった。メーカーオプションでレカロシートも設定されていたのだが、同一車種でここまでコンセプトが多岐にわたったのも珍しい。
開発段階から欧州での販売を視野に入れていた。サスペンションはどちらかというと硬められたスポーティな味付けとなっていたが、販売の中心はホットなターボではなくNAモデルとなっていたため、乗り心地の悪いクルマという印象が強かったのも残念なポイントだった。
なおYRVは実際に欧州でも販売されており、ドイツでは年間5000台の販売を計画。しかし、実際は2000年から2006年までの販売の累計でも5000台に満たないという結果に終わってしまっている。
クルマとしての完成度は悪くなかった
日本国内ではターボエンジンを搭載したホットハッチが消滅したこともあり、ターボモデルのMT仕様を求める声が一部からあったものの、結局最後までMTは設定されず、5年間の販売台数は3万台弱と商業的に成功したとは言い難いものとなってしまった。
若者向けにリリースしたものの、当の若者の多くはムーヴを購入し、コンパクトで広い室内空間に惹かれて購入した一般ユーザーには乗り心地の硬さを指摘された。スポーティさを求めるユーザーにはMTがないと残念がられるというすべてが裏目に出てしまったYRV。クルマとしての完成度はそこまで悪くなかっただけに、ちょっとしたボタンの掛け違いが悔やまれる1台だった。