北米生まれのエクステリアデザインでスマッシュヒットを記録
今ではバスやトラックといった働くクルマを製造販売するメーカーとして知られているいすゞ。過去には名車と呼ばれる乗用車を多くリリースしていたことは、クルマ好きであれば知るところだろう。
乗用車は先行して開発を停止し、他メーカーからのOEM供給を受けた車両を販売していたが、最後まで販売していたのがSUVである。そんないすゞが生み出したSUVの中から今回は「ミューウィザード」をご紹介しよう。
実用性を度外視したモデルだった
ミューウィザードは、1989年に登場したミューをベースに5ドアのSUVとして生まれたモデル。ベースとなったミューは2ドアボディでリヤにハードトップ、もしくはソフトトップを備えた2人乗り(ソフトトップは2+2)という実用性は度外視したモデルだった。
1990年代に入るとRVブームが巻き起こり、いすゞもすでに一定の人気を博していた「ビッグホーン」に続く2車種目を投入することに。そこで誕生したのが「ミューウィザード」というワケだ。
なお、ミューウィザードのベースとなったミューは、ピックアップトラックである「ファスター」とその4WDモデルである「ロデオ」がベースとなっている。北米市場ではすでに5ドアボディを持ったモデルが存在していた。
タイではフルモデルチェンジをすることなく2002年まで製造
当初はそのモデルをベースに右ハンドル化を行い、日本に輸入して販売をする予定となっていたが、当時このクラスのRV車はディーゼルエンジンが人気となっており、V6ガソリンエンジンを搭載し、乗り心地の面で不利なリーフスプリングのリヤサスペンションなどが商品力に劣るという声が挙がったのだ。
結局、ミューウィザードは北米仕様を輸入するのではなく、日本でディーゼルエンジンと4リンクコイルのリヤサスペンションを備えた仕様を生産して販売する形をとった。
そんな紆余曲折を経て誕生したミューウィザードは苦労の甲斐あって、ビッグホーンよりも買いやすい価格と5ドア化によって伸びたホイールベースによる広い室内空間、そして北米生まれのエクステリアデザインなども相まってスマッシュヒットを記録。
1998年6月にはミューと共に2代目へとフルモデルチェンジを果たしたが、ミューウィザードからはミューの名前が取れ、単にウィザードとなった。また、タイではフルモデルチェンジをすることなく2002年まで製造が続けられ、現地ではいまだに高い人気を誇っているようである。