じつはライズと大きく変わらない「ヤリスクロス」
ヤリスクロスは、たしかにヤリスのクロスオーバーモデルなのだが、ボディサイズは全幅1765mmとグッと大きく(3ナンバー)、ライズとC-HRの中間となるポジショニングに位置する。
ヤリスとパワーユニットやCVT、ホイールベースなどを共用するものの、リヤオーバーハングを延長し、アウトドアライフなどで不可欠な、大きな荷物を積載可能とする大容量かつ使い勝手のいい荷室を実現。さらに最低地上高170mmとともに、本格的な4WD機能さえ備えているのが特徴だ。
後席の居住スペースは身長172cmの筆者がドライビングポジションを決めた背後に座ると、頭上に120mm、膝周りに115mmというスペースなので、じつはライズと大きく変わらないことになる。
一方、ラゲッジスペースは実測で6:4分割&脱着が可能かつ、超便利な2段デッキボード下段位置で奥行き790mm、幅995mm、最低天井高745mm。大型スーツケース2個、ゴルフバッグ2個を、後方視界を犠牲にせず積みこめる容量だから、コンパクトクロスオーバーモデルとしての積載性は優秀と言っていい。
ヤリスクロスのパワーユニットはすべて3気筒1.5Lで、ガソリンのNAとHVを揃える。2WD、4WDともにガソリン車は軽快感ある走り、全高、着座位置の高さを感じさせない水平感覚に徹したカーブ、レーンチェンジでのスムースさ極まる走行性能が好ましい。
だが、加速性能は穏やかで、ドライブモードをパワーモードにセットして活発な走りをしようとすると、エンジン音が車内に充満。静かなクルマとは決して言えない。
また、18インチタイヤ装着車は乗り心地がけっこう硬めになる。HVの4WDは電気式4WD=E-Fourのリヤ部分が発しているであろうノイズによるザワついた走行感覚、エンジンを高回転まで回したときの、ガソリン車に近い騒々しさがちょっと気になるかもしれない。
で、ヤリスクロスの真打ちモデルは、HVの2WD(G、Zグレード)である。出足のEV走行によるスムースさ、モーターアシストによるトルキーな動力性能の余裕、大径18インチタイヤを履きながら、重量増がもたらすガソリン車とは別格の角が丸められた乗り心地の良さ。これらはHV 4WDと同質ながら、より静かでHV感が強く、意外なことに、エンジンを高回転まで回しても、それほどうるささを感じないのである。
約120km/hまで可能だというEV走行にしても、首都高速での80km/h巡航でさえねばり強いEV=モーター走行を確認している。
アウトドア適正度でも、ヤリスクロスのHVモデルはAC100V/1500Wコンセントがオプション設定されている。それを装備すれば、車内外で1500Wまでの家電品、例えばコーヒーメーカーや簡易電子レンジ、照明などが使え、アウトドアライフをより一層、快適なものにしてくれるのだ。
ただ、悪路走破性を重視するなら、HVの電気式4WDよりもガソリン車の4WDのほうが有利であることは間違いない。スノーモードのほか、マルチテレインセレクトのMUD&SAND、ROCK&DIRTモードが加わるからである。
実際にいろいろなテストトラックを走破したが、悪路の走破性はかなり本格的だったのである。もちろん、HVモデルでも電気式4WDを手に入れれば、ちょっとした悪路、雪道で威力を発揮してくれることは間違いなしだ。
後席格納時の使い勝手ではヤリスクロスに劣ってしまう「カローラクロス」
そんなライズ、ヤリスクロスに対して、装備、走行性能、乗り味(トヨタの上級車並み!!)、後席を含む快適性などで一気にグレードアップされるのがカローラクロス。アウトドア適正で気になるラゲッジスペースも、フロア奥行830mm、幅1120~1355mm、最低天井高840mm~と、ライズ、ヤリスクロスを凌いでいる。
ただし、開口部に150mmの段差、後席格納時の拡大ラゲッジスペースの後席格納部分に180mmもの段差ができるのが惜しい。つまり、ラゲッジスペースの広さ、積載量では優位に立つものの、重い荷物の出し入れ性と、後席格納時の使い勝手では、後席を格納してもフラットフロアになるライズ、ヤリスクロスに劣ってしまうことになる。
よって、アウトドアで使いまくるコンパクトクロスオーバーモデルとして、価格重視、想像以上のラゲッジスペースの使いやすさで選ぶならライズ、よりSUVらしい堂々感あるエクステリアデザイン、走破性を含めたオールラウンド性能、ラゲッジスペースの使い勝手ではヤリスクロスを推奨したい。