理想の働くクルマ
宮崎県で林業をなりわいにしている「agestyl-el」さんは、スズキ「エブリイ」をベースにほぼ独学、DIYで自分が思い描く理想の「働くクルマ」を目指してカスタマイズ。どうせカスタムするならカッコ良くしたい。そんな想いからアメリカンテイストのリメイクに挑戦したという。
5年かけて通勤の足として活躍中
およそ5年をかけて現在の姿になったagestyl-elさんの3代目DH17Wエブリイ。このクルマは、毎日、仕事場である山の中に入り、木材の切り出し作業を行う通勤の足として活躍中だ。
仕事場に向かう道中は、舗装されていない轍だらけの険しい道。フルタイム4WDのターボモデルだが、純正の車高のままだとデフケースやフロアをヒットしてしまう。これを毎日繰り返していたらクルマの寿命が短くなるだけ。そこで最初のカスタムとして、エブリイのリフトアップ計画を実行した。
まず、アウトクラスカーズの5インチリフトアップキットを装着。タイヤ&ホイールもインチアップして外径を大きくすることで、よりリフトアップ量も稼ぎ出した。
装着したのは、レイズのTE37ホイールとマキシスM/Tビッグホーン764タイヤの組み合わせ。見た目もワイルドなこのタイヤは、太くて深いトレッドブロックが泥濘の中でも目詰まりを起こすことなく高いトラクションを確保するオフロードタイヤとして知られている。このエブリイには235/75R15サイズを履かせている。
また、タイヤ&ホイールの大型化にともないブレーキの効きが悪くなってしまったので、ブレーキは6ポットキャリパー+大口径フローティングローターによって安全にしっかり止まるブレーキチューニングを施した。
こだわりの一品は「ワンオフマフラー」
できることは自分で何でもチャレンジするagestyl-elさん。このエブリイが装着している自作パーツの中で、とくに苦労した作ったパーツは何ですかという問いに対して、すぐさまマフラーと答えてくれた。
たしかにまるで蛇がとぐろを巻くように複雑にうねるマフラーが装着されている。オーナー自らが設計し、ハンドソーを使ってステンレスパイプから約70個もの割切りパイプを切り出した。それをTIG溶接で繋ぎ合わせたて作ったとのこと。さすがに溶接は難しくて自分ではできないので、熟練の鉄工所にお願いしてやったもらったそうだ。
このマフラー、触媒は残したまま中間パイプ以降のみ交換している。それにしても、この複雑な形状を輪切りのパイプで作り出すとは感心する。
この芸術的なマフラーを見せるためバンパーレス仕様にしているのも大きなポイント。前後とも自作でバンパーガードを作って装着。外装では他にもバンパーガードと同じ部材を使ってドアステップも製作している。表面処理は手軽に塗れて武骨な雰囲気を醸し出すチッピングスプレーで処理。また、見た目のカッコよさと泥除けの意味も含めてオーバーフェンダーを追加し、そこにアメリカンテイストを感じさせるスパイダーデザインのペイントを施した。
インテリアについては、レイアウトも含めてすべて作り直されている。最後部には、仕事で使う草刈り機やチェーソーと言った道具を効率的に出し入れできるように専用ラックを考案して製作した。
ドアやルーフ、運転席まわりは純正のままでは安っぽかったので総アルカンターラ仕上げでコーディネイト。さぞコストがかかっているかと思いきや、材料費はたったの1万円程度。DIYだとこれくらいの費用で済んでしまうのだ。
今後の予定はフルラッピングを検討中。山道を走って傷が入るたびに塗装するのは大変なので、ボディ保護も兼ねたラッピングによって、今以上にアメリカンテイストあふれる見た目に仕上げる予定だ。agestyl-elさんの険しいカスタムはまだ道半ば、てっぺんはなかなか見えないと話してくれた。