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なぜ「エリシオン」は「アルファード」に勝てなかったのか? ホンダ渾身の最上級ミニバンは非日常感覚いっぱいでした

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TEXT: 島崎 七生人(SHIMAZAKI Naoto)  PHOTO: 島崎七生人

上級サルーンのような快適性と非日常感をアピールするも……

 エリシオンに話を戻せば、清楚でクリーンな外観デザインでデビューしたところにも主張があった。「ハチ巻き」などと呼んだ、バックドアからDピラーに回した赤いストライプはアクセントのひとつだった。これは想像に難くなかったが、先発のアルファード、エルグランドが押し出しと迫力で人気を集めていたなかでは、「控えめという主張」ではいささか弱く、2008年12月には顔まわりだけでなくリアエンドのデザインも大幅に手直し。筆者個人の感想と好みでは「あーあ」と残念に思えたフェイスリフトであったが、売りを考えれば致し方なしといったところだったのだろう。

 なおエリシオンの最初のカタログを見返すと、最初から16ページまでがひたすら外観写真で続き、その次の4ページが気筒休止を採用した3LのV6エンジンの話、ボディ骨格、リアのサブフレームの話と続く。さらにその次でようやく室内の話に移り、シートアレンジ、サイドリフトアップシートの紹介や、パワースライドドア、パワーテールゲートなどの紹介へと続く。

 ミニバンであるが、いわゆる家族を想定したモデルをからめたカットがなく、あくまでも上級サルーンのごとき快適性、上質感を前面に出した仕立てのカタログで、生活感を出していないところが特徴だったというべきか。それはフェイスリフト後の後期型のカタログでも同様で、電動パーキングブレーキ(=国産ミニバンでは初採用だった)の操作カットで「人の手元のアップ」こそ登場するが、走行シーンのドライバーの姿はしっかりと消されて(またはボカされて)いて、非日常感覚のシーンの中を颯爽と駆け抜けるエリシオンが写っている。

 冒頭でも触れたが、セダン同様のヒエラルキーに商機を見出したはずのエリシオンだったものの、実際の販売は決して芳しいものではなかった。だが、そのことこそ、ホンダのユーザーがクルマに個性、ホンダらしさを強く求めていたことを証明したのではないか。トヨタであれば「マークII」から「クラウン」に乗り換えるように、「ノア/ヴォクシー」から「アルファード」に乗り換えるユーザーはいても、ホンダのユーザーが「アコード」から「レジェンド」にヒョイと乗り換えるかというと、そうではなかった気がする。個性と普遍性の狭間でもがいたクルマがエリシオンだったのかもしれない。

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  • 島崎 七生人(SHIMAZAKI Naoto)
  • 島崎 七生人(SHIMAZAKI Naoto)
  • 1958年生まれ。大学卒業後、編集制作会社を経てフリーランスに。クルマをメインに、写真、(カー)オーディオなど、趣味と仕事の境目のないスタンスをとりながら今日に。デザイン領域も関心の対象。それと3代目になる柴犬の飼育もライフワーク。AMWでは、幼少の頃から集めて、捨てられずにとっておいたカタログ(=古い家のときに蔵の床が抜けた)をご紹介する「カタログは語る」などを担当。日本ジャーナリスト協会会員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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