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3億円! アウディの怪物マシン「スポーツクワトロ」は制御不能!? すべてがキレていたワークスマシンとは

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: Courtesy of RM Sotheby's

フルレストア済みの美車

 今回RMサザビーズ「LONDON」オークションに登壇したアウディ・スポーツクワトロS1 E2は、同じオークションにフェラーリのスペチアーレ各モデルやブガッティ「EB110」、ジャガー「XJ220」なども売りに出していたプライベートコレクター「グランツーリスモ・コレクション」から出品されたもの。もともと、アウディの社内コードナンバーではRE10と名づけられ、1985年11月にアウディ本部のあるインゴルシュタットにて「IN-NP 31」のナンバープレートで登録された。

 デビュー戦となる1985年の「ロンバードRACラリー」では、元世界ラリーチャンピオンのハンヌ・ミッコラ/アーニー・ハーツ組に割り当てられた。ミッコラは第1ステージまでスロースタートながら、SS14から総合首位に躍り出る。ところがSS22でエンジントラブルに見舞われて、残念ながらリタイアに終わってしまった。

 RACラリーののち、このクワトロE2は1986年の「ラリー・ド・ポルトガル」のトレーニングカーとテストカーとして使用されたあとに、ワークスカーとしては退役した。

 そしてグループBが非合法化されたあと、このS1 E2は1985年5月にアウディの良き顧客であり、有名なコレクターでもあったマイケル・ガベルへと放出された。この時点で、550psのロケットを一般路上でもドライブしたいと考えた新オーナーは、RE10をより「文明的」にするためにガラス製のサイドウインドウやフライオフ式ハンドブレーキ、および防眩用にスモーク処理を施したリアウインドウなど、いくつかの修正をリクエストした。

 その後、複数のラリー・スペシャリストのもとでデモランなどに供用されたRE10は、2012年にさる有名なラリーコレクションへと譲渡。ここでボディ総剥離の再塗装を含むフルレストアを受けている。

 そして、2020年にグランツーリスモ・コレクションに買収されたのちは、静態展示だけでなくデモンストレーション走行にも使用されるとともに、アウディ・クワトロのスペシャリストであるBGMスポーツ社によって、メカニカルコンディションは完璧に保持されているという。

 アウディ・ワークスが製作した20台のクワトロS1 E2のうち、現存するのは15台のみと考えられている。またこの15台のうち、WRC戦のラリーに出場したのは6台だけで、現在ではそのうちの4台が個人オーナーのもとに所有されている。

およそ3億円での落札

 ほとんどがアウディ本社ないしはそれに準ずるオフィシャルな団体によって所蔵され、一般のマーケットに流通する機会はきわめて貴重なクワトロS1 E2ゆえに、グランツーリスモ・コレクションとRMサザビーズ欧州本社が設定したエスティメート(推定落札価格)は、175万~225万ポンドというかなり強気なものとなった。

 そして2022年11月5日に行われた競売では180万5000ポンド、日本円に換算すれば約3億円で落札される大商いとなったのだが、伝説のグループB時代を象徴するモンスターであること、そして圧倒的な希少性を考慮すれば、まずは順当な落札価格だったといえるのかもしれないのである。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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