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総勢200台! 昭和レトロな商店街に「ワーゲン」大集合! 空冷VW「ビートル」が江戸崎に集まるようになった理由とは

2022年11月27日に茨城県稲敷市の江戸崎町商店街で開催されたイベント「6th Show Your VWs Meet at Edosaki Shotengai」

江戸崎商店街のクラシック・ワーゲン集会が3年ぶりの開催

 2022年11月27日(日)、茨城県稲敷市は江戸崎町にある商店街を舞台に、3年ぶりとなるクラシック・フォルクスワーゲンのイベント「6th Show Your VWs Meet at Edosaki Shotengai」が開催され、関東近郊から200台近い個性ゆたかな空冷VWが集結した。メイン会場の江戸崎商店街は、その名の通り、江戸時代からの神社・仏閣などが数多く残る霞ヶ浦の入り江に面した閑静な街並みの中にある。当日は全面通行止めにした商店街の通り一面に、事前に申し込みを済ませたVWが所狭しと並べられ、多くの参加者と来場者でにぎわった。

地元のワーゲン乗りたちで力を合わせて立ち上げたイベント

「霞ヶ浦で釣りがしたくて埼玉から移住したのですが、ワーゲン屋を始めた2006年は、誰も知り合いがいませんでした。このイベントは10年くらい経ってから始めたました」と語ってくれたのは、このイベントの主催者のひとりであるVWショップ「RIMガレーヂ」の菊池さんだ。

 さっそく、江戸崎で空冷VWのイベントを開催しようと思ったきっかけを聞いてみると、「江戸崎のワーゲン乗りに市議会議員、商工会、教育長(当時)の方がいて、みんなで他の空冷VWのイベントに参加していたのですが、江戸崎でもやりたいね、って意気投合したのがきっかけです。ちょうどその頃、商工会でも町おこしの方法を考えていた時期でもありました。それで、たまたま知己を得た、空冷VW雑誌のイラストでも有名なレッドホットさんにポスターを書いてもらったり、同業の先輩たちにも声をかけて、2015年になんとか第1回目を開催することができたんです」と話してくれた。

2022年は過去最大の参加台数120台+場外約80台

 いよいよ朝8時半過ぎ。会場への誘導が始まった。ひと足先にショップやフリーマーケット、ケータリング関係の皆さんが準備を始めていて、手招きされたのでクルマを進めると、「隣と1m間隔で斜めに停めてください」と言われた。前回もこんなにキツかったっけ? と思いながらクルマを停めると、目の前に縦列駐車する車両が入りはじめたのでピンときた。知り合いの空冷VW乗りに挨拶すると、さっそく「今年は前回の倍らしいよ」とのこと。その点について運営サイドの菊池さんに苦労話などを尋ねてみた。

「今年は申し込みが予想以上に多くて嬉しい悲鳴でした。会場は地元警察にも協力してもらって、商店街の目抜き通りを通行止めにして行うのですが、今年は参加台数が120台と昨年の倍だったので、どうやって配置しようか? と何度も検証したんです。通行止めの範囲も限りがありますし、最後の手段として、商店街に面した個人所有の空地にも置かせてもらえるように交渉しました」

人気の秘密は、地元ならではの心地良い手作り感

 2015年に始まった江戸崎の空冷ワーゲンイベントは、2016年から2019年まで毎年、順調に開催してきたが、2020年と2021年はコロナ禍により中止を余儀なくされた。今年は3年ぶりの開催ということもあって、参加者の間でも事前に盛り上がりを予想していたが、今年これだけの台数が集まった理由は他にもあるようだ。

 当日イベントに参加している何人かと話をしたが、「(江戸崎のイベントは)アットホームな雰囲気が好きだ」、「のんびりした手作り感がいい」という意見が多い。たしかに、参加者が久しぶりに会う仲間との情報交換やパーツ探しで楽しんでいる間、一緒に連れてきた家族も飽きないようにたくさんの仕掛けが用意されていた。

 例えば、地場の採れたて野菜や特産品はお安くて新鮮なのが売りだ。小物や衣類など、宝探しのようなフリーマーケットには、つい足が止まってしまう。それだけじゃない。地元の旨いものも見逃せない。当日もこのイベントの常連組が名物のうなぎ弁当に狙いを定めていた。案の定、今年は過去最大の集客だったこともあって、予想外の争奪戦が繰り広げられていたほどだ。もっとも、その近くでは旨い匂いが漂うハンバーガー、ケバブ、手作り弁当などなど、よりどりみどりのチョイスができるのも楽しい。

スタッフと参加者、みんなの力でイベントが大きくなった

 多くの来場者でごった返す会場を見て菊池さんは3年ぶりの開催をこう振り返る。

「町おこしの一環でもあるので、安全を最優先に考えれば、2年連続の中止はやむを得なかったと思います。でも、本当にありがたいことに、回を重ねるごとに参加者(車両展示の参加者や出店などでの参加者)、ボランティアで手伝ってくれるスタッフが増えました。このイベントはもはや、江戸崎の仲間なしでは成り立たないと思っています。今年の開催が決まってからは、このイベントをきっかけにして空冷VWのオーナーになった畳屋さんや、今回の参加賞(革製の靴ベラ)を作ってくれた靴屋さんなど、江戸崎の職人さんたちも本気で手伝ってくれました。イベント主催者である自分たちが一丸になって取り組んだことが、受け手である来場者の皆さんに伝わったと思うと、本当に今年再開して良かったと思います」

 後日、菊池さんと連絡を取ると、「皆さんを送り出した後、全員で会場を掃除するのですが、来場者が増えているのに、ほとんどゴミが落ちてないんです。これってすごくないですか」と、声を弾ませると、さらにこう続けた。「イベントの前に、江戸崎のメンバーで話すのは、いま空冷VWに乗っている人がイベントを楽しむのはもちろんですが、たくさんの子どもたちや、あまりVWに関心がない人たちにも、こうした楽しいクルマが集まってくるワクワク感というか、楽しい雰囲気を見て、感じてもらって、いつかは、やっぱり空冷VWのオーナーになって、江戸崎のイベントに参加して欲しいね、って言ってるんです」

「また来年!って、みんな帰っていくんです」

 こんなに心地よいイベントだったら、来年はまた台数が増えそうですね? と水を向けると、「ありがたい話ですが、江戸崎の会場は120台が限界です。それでも今年は試験的に少人数でのキャンプ(前泊)をやってみたんですが、これなら少しは増やせるかな」と、すでに新しい工夫、楽しんでもらうための取り組みを始めているようだ。

 イベント主催者としては、人気が上がるのは嬉しいに違いないだろう。しかしながら会場に制約がある江戸崎の場合は、この規模を維持しながら、コンテンツでファンを増やす方法を模索している。少し風も冷たくなり始めた午後3時。帰り支度をする参加者の多くが、「また来年!」と挨拶していた。きっと1年の締めくくりとして江戸崎のイベントを楽しんだのだろうし、実際このイベントが、そういうポジションを確立してきた証左ではないだろうか。ポカポカ陽気にも恵まれた江戸崎の空冷VWイベントは、主催者全員の温かさのように感じた。

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