メーカーから誕生した万人受けはしなさそうな超本格派たち
自動車メーカーがリリースする車両は、良くも悪くも万人受けするようになっており、スポーツモデルであってもゴリゴリの仕様ではなく、ある程度マイルドな仕様となっているのが一般的だ。
しかし、なかにはメーカー(もしくはメーカー直系のワークスブランド)が手がけてディーラーで販売していたにも関わらず、とんでもなく手が加えられているモデルも存在している。今回はそんな純正カスタマイズカーを振り返ってみたい。
ボディワークにも注目の「日産マーチボレロA30」
日産車のスペシャリスト集団であるオーテックジャパン(現日産モータースポーツ&カスタマイズ株式会社オーテック事業部)の創立30周年を記念して、30台限定で販売されたのが「マーチボレロA30」だ。
このモデルは同社が手掛ける「マーチボレロ」(K13型)をベースに、スペシャルチューニングを施している。1基1基手組みされた1.6Lエンジン+5速MTの組み合わせとなるパワートレインを搭載。90mmワイドトレッド化に合わせて拡幅されたボディパネルに、専用の鍛造削り出しのアルミホイールなどを採用し、オーテックの技術の粋を集結して生み出されたもの。
当時の価格は330万円(消費税別)と、マーチとしては高額となっていた。だが、その内容を考えれば明らかにバーゲンセール。実際、上乗せされた価格は部品代のみで、手練れの職人が手掛けた手間賃はノーカウントとも言われており、記念モデルならではの価格となっていた。
刺激的な走りが楽しめた「ダイハツ ストーリアX4/ブーンX4」
ダイハツのコンパクトカーとして、手ごろな価格で販売されていた「ストーリア」。そして、その直系の後継車種である「ブーン」。車両価格も抑えられていたので日常のアシとしてや、営業車として使われることも多く、何気なく見かける車種である。
そんな2車種だが、「X4」と呼ばれるグレードだけは別物で、こちらは完全なるコンペティショナルマシンだった。
ストーリアは713cc、ブーンは936ccという中途半端な排気量のターボエンジンを搭載しているが、これはラリーのクラス分けで特定のクラスに参戦するため、(前者は1L以下、後者は1.6L以下)逆算して導き出されたもの。
さらにフルタイム4WDの駆動系や、街乗りでの快適性は完全に無視した超クロスかつローギヤードのトランスミッションなど、ベース車の営業車のような見た目とは裏腹に、超硬派なマシンに仕上がっていたのだ。
スポーツカー顔負けの「トヨタ コンフォートGT-Z スーパーチャージャー」
今でこそタクシーというと「JPNタクシー」が多く目に付くようになってきたが、ひと昔前のタクシーの定番といえば、トヨタの「コンフォート」シリーズだった。また教習車としても使われることが多く、読者のなかにはコンフォート教習車で運転のイロハを学んだという人もいることだろう。
そんな四角く古めかしいセダンをベースに、トヨタテクノクラフト(当時)が手掛けたのが、「コンフォートGT-Z スーパーチャージャー」だ。
その名の通りスーパーチャージャーで武装されたこのモデルは、教習車仕様に設定されていた2Lガソリンエンジンの3S-FE型エンジンにスーパーチャージャーを組み合わせ、160ps/22.0kg-mの出力を発生。トランスミッションは当然5速MTで、30mmダウンとなる専用サスペンションを装着していた。
また足元にはワタナベのエイトスポーク、エアロパーツはチンスポと板ッパネと、80年代の走り屋テイストを感じさせるものとなっていた。そのほか、オプションとして3連メーターや強化クラッチ、LSDなどが用意され、FRらしい走りを楽しむことができる1台に仕上げてクルマ好きを魅了したのだ。