クルマの進化や環境対策でチューニングを取り巻く環境が変わった
日本のチューナー、チューニングメーカーは優秀で、つねに改良、進歩に余念がない。それゆえ日々新しいアイデアが生まれ、技術もどんどん進化している。そうして試行錯誤が繰り返される中、脚光を浴びたものであっても、新しい技術が導入されたことで廃れていってしまうものも……。そうした今では影を潜めてしまったチューニングをいくつか振り返ってみることにしよう。
エアロホイール
1980年代半ばに人気絶頂だったグループCのレーシングカーに採用されたエアロホイール。ホイールの表面をフラットなキャップ=エアロキャップで覆い、空気抵抗を軽減するものだった。ホシノインパルが「プロメッシュグループC」という商品名で製品化もしたが、ブレーキの放熱性、軽量化、脱着作業性などに難があったためか、ブームは長続きしなかった。
ただし、空力的には確実なメリットもあり、エアロキャップを取り付けることで、Cd値で0.01のマイナスがあり、BMWがiX3用に開発したエアロダイナミックホイールは、BMW X3の純正ホイールに比べ、空気抵抗を約5%軽減。ホイールアーチ周辺の空気の流れを最適化と軽量化(15%)にも貢献しているので、エコカーを中心に、今後復権する可能性も!?
ウレタン補強
ウレタン補強は、サイドシルなどボディの筒状になっている部分に、硬質発泡ウレタンを充填してボディの剛性をアップするチューニング。
一時期かなり注目されたが、クルマをぶつけたときの修理が困難で、水分がたまって内部が錆びるといった問題や、一度やったらやり直しがきかないことに加え、長期的にみた場合、効果がかなり疑問視されて廃れてしまった……。
その後に流行り出したのが、特殊な接着剤を使ったパネルボンドによる補強。これはスポット増しと違って剥がれず錆びずノーメンテでOKだ。
ROMチューン
かつてコンピュータチューンといえば、メインコンピュータのROM(読み出し専用の記憶装置)データを書き換えるROMチューンが主流だった。
しかし、いまのクルマのコンピュータはROMではなく、フラッシュロムを使っているので、物理的な部品(ROM)の交換は不要。OBD(自己診断機器)の接続ポートにパソコンを接続すれば車載のままデータの書き換えが可能だからだ。
これらはECM(エンジンコントロールモジュール)チューンなどと呼ばれている(かつてはエンジンコントロールユニットのことをECUとも呼んでいたが、ECUはエレクトロニックコントロールユニット、つまり電子制御装置の総称とSAE=自動車技術者協会で定義されている)。
追加インジェクター
ボルトオンターボやタービン交換といったチューニングが広がりだした頃、タービンの容量に合わせてどう燃料を増やすかがひとつの課題だった。
当時はコンピュータチューンも発展途上で、大容量インジェクターを精密に制御するハードも技術もなかったので、メインインジェクターに追加インジェクターをプラスして、それを追加インジェクターコントローラーで制御するのが一般的だ。
しかし、コンピュータも賢くなり、処理速度も速くなり、チューナーのコンピュータの解析、セッティング能力も上がったことで、フルコンやメインコンピュータで、大容量の多口式インジェクターを制御するのが当たり前になり、追加インジェクターの出番は失われていった……。
触媒ストレート
排気効率を語る上で、かつては目の敵にされていたのが触媒。触媒を外すのは今も昔も非合法だが、スポーツ触媒がメジャー化する前は、純正触媒を外して、触媒のスペースにただのストレートパイプを入れて、排気抵抗を減らすチューニングに走る人も……。
彼らが触媒代わりに使った直管が、いわゆる「触媒ストレート」。昨今では環境性能が厳しく問われるようになり、排気抵抗が少なく、保安基準もクリアするスポーツ触媒が普及したことで、触媒ストレートを使うチューニングは下火になった。
アーシング
10年ぐらい前に流行ったアーシング。もともとボディアースを利用していた部分を、専用のアーシングケーブルで直結し、電気の流れをよくするのが目的のチューニングだ。
エンジンの始動性やレスポンスのアップ、ライトが明るくなる、オーディオの音がよくなる、燃費性能の向上などのメリットとともに、エンジンルームのドレスアップにもなるとして評判に。
しかし、自動車メーカーは細心の注意を払ってハーネス類の設計を行っており、古いクルマならともかく、新車ではほとんど効果がない。
さらに後付け配線は電気系トラブルの大元でもあり、センサーやECUが誤作動を起こしたり、車両火災の原因になった例もたくさんある。細い配線は、大きなトラブルを防ぐヒューズとしての役割として、ワザと容量を絞っていることもあるので、おすすめできない。
それよりも、コネクターや端子をきれいにし、ボディのサビ対策を施し、劣化したハーネス類を新品に交換した方が、安全かつ効果的だ。