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トヨタ「iQ」とは何だったのか? 「アストンマーティン」や「GRMN」も手掛けた1代限りのシティコミューターを振り返ろう

トヨタiQのフロントマスク

トヨタはときに斬新な企画のクルマを登場させる

 1997年に、ドイツのメルセデス・ベンツとスイスのスウォッチとの共同開発により、スマートが誕生した。2人乗りのシティ・コミューターだ。同様の考えでトヨタが2008年に売り出したのが、iQである。

 車名の意味は複合的で、iは、個性という意味のインディビジュアル、革新という意味のイノベーション、知性というインテリジェンスの意味が含まれているという。Qは、品質という意味のクォリティに、発音が近く外観を象徴するような意味で立体という意味のキュービック、そして新しい価値観や生き様へのきっかけとしてキュー(キュー出しなどで使われる)も含まれるとのことだ。

エンジンは1Lと1.3Lを設定

 車体全長が、軽自動車規格の3.4mより短い3m以下である一方、車幅は軽自動車の1.48mより広い1.68mとした。そして、4人乗車である。ただし、実質的には大人3人に子どもが1人といった広さだ。

 エンジンは排気量1Lの直列3気筒で、CVT(ベルト式無段変速機)が組み合わされる。のちに、1.3Lの直列4気筒エンジンも追加された。

 都会を自在に走るクルマとして、軽自動車より排気量の大きなエンジンで活き活きと走ったが、車幅は5ナンバーの小型車と同じため、国内の狭い道を苦にせず走れる軽自動車と違った感触があった。では、なぜ軽自動車ではなくiQなのかという答えは見出しにくかった。

もしもEVになれば……

 新車当時に思ったのは、これが電気自動車(EV)へ発展すれば、興味深い存在になるのではないかということだった。そしてトヨタは、2009年にまさしくEVのiQであるFT-EVというコンセプトカーを発表し、2012年に量産型のeQとして限定販売を行った。EVとなれば、静かで上質な乗り味が得られ、ガソリンエンジンの軽自動車と一線を画すことができる。しかも、モーター駆動であれば瞬発力も高くなり、まさに都市を壮快に走るクルマとなりえるのだ。

 iQの価値に注目したのが、英国のアストンマーチンだった。一部の外板を独自の造形にし、内装を革仕様としたシグネットを発表している。ほかに、TOYOTA GAZOO RacingによるGRMNも限定発売された。しかしその後の発展はなく、2016年に生産を終了した。

 1970年のセリカ、1990年のエスティマとセラというように、トヨタはときに斬新な企画のクルマを登場させることがある。2008年のiQも、そうした野心的な一台であったのだ。

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