新ジャンル「クロスオーバーSUV」を開拓した「ハリアー」が誕生して25年
「トヨタ、新ジャンルの高級車“ハリアー”を発売」……1997年12月25日付けの当時のニュースリリースには、そうタイトルが付けられていた。さらにサブタイトルに「スポーツ ユーティリティ サルーン」の表記も。
乗用車から派生した初めてのクロスオーバー車
1997年というと、当時手伝っていた某出版社の購入ガイドのその年の号を見ると、まだ「SUV」の区分はなく「クロスカントリー&ピックアップ」などとなっており、さらにトヨタの車種としては「RAV4」、「ハイラックスサーフ/ハイラックス」、「ランドクルーザー・プラド」、「ランドクルーザー70/80」、そして「メガクルーザー」があった程度。「程度」といっても今と比べると車種数が少ないだけで、当時としては乗用車ライクな初代RAV4が好評を博しており、ハイラックス、ランクルといったオフロードマニアから支持される車種はしっかりと用意されていた。
まさしくそうした状況のなかで、新ジャンル、新種のクルマとして登場したのが初代ハリアーだったのである。ちなみに当時は、メルセデス・ベンツ「Mクラス」こそ登場していたが(1997年登場、日本市場へは1998年投入)、BMW「X5」の登場は2000年だったため、内外の自動車メーカーを見渡してもハリアーはSUVのパイオニアだったことになる。
初代ハリアーの最大の特徴は、乗用車派生の初めてのクロスオーバー車だったという点にある。それまでの、クロスカントリー車などと呼ばれたこのジャンルのクルマというと、ラダーフレーム構造のヘビーデューティなタイプだった。それに対して初代ハリアーは、今なら当たり前だが、乗用車派生で作られた最初のクルマでもあった。
驚くほど乗り心地のよい足まわりが自慢だった
具体的には日本市場では2代目「ウィンダム」(6代目「カムリ」)とプラットフォームを共用。採用された要素技術はもちろんたくさんあったが、とりわけ前後サスペンション(ストラット式コイルスプリング)を井型防振サブフレームでマウントした、操縦安定性と乗り心地、静粛性を高めた設計だったところは自他ともに認める初代ハリアーの自慢のポイントだった。
この点は筆者も当時、試乗した際に強く印象に残っているところで、たとえばそれはインパネのアッパーフェイシア部分にタバコの箱を立てて置いても倒さずに走れたほど。鉄道開業100年の頃(1972年頃)の鉄道を扱ったTVドラマで、熟練の機関士が連結器の上にタバコを1本立てたままそれを倒さずに車両と車両を連結させる……そんな話があったことを、幼少から鉄道マニアでもあった筆者は初代ハリアーを富士山麓周辺でひとりで試乗しながら思い出していたものだ。