プロドライバーも驚く圧倒的な加速性能
走り味も近未来的である。ホイールベースはS400ロングに迫る数字だが、そこで気になる最小回転半径も、EQS 53は5.3mとコンパクトモデルに迫る数字なのだ。そのカラクリは、リアのステアリングコントロールによる。最大で10度(EQS 450+のオプション)まで逆位相になるというから、これはもうフォークリフトを操縦する感覚である。試乗を開始して最初のカーブで思わず切り込みすぎて、内輪差にハッとしたほどである。
ともあれ、もっとも衝撃的なのはその動力性能である。後輪駆動のEQS450+でさえシステム最高出力は333ps、同じく最大トルクは568Nmに達する。動き出しの瞬間からマックストルクに達する電気モーターの特性上、不用意なアクセルオンではちょっと胃袋あたりに不快感が湧きあがるほど速い。
そんなだから、システム最高出力658ps、最大トルク950NmのAMG EQS 53 4MATIC+はヤバい。これほどまで力強く加速させる必要がどこにあるのか、真意を疑いたくなるほど速いのだ。仮に僕がAMG EQS 53 4MATIC+を購入したとしても、おそらく購入から売却まで一度もフル加速をすることはないのだろうと想像したほどだ。
乗り味も個性的だ。S400dよりも静粛性が高い分だけ近未来感があり、その影響で、タイヤが路面から浮遊しているかのような、未確認飛行物体で飛んでいるかのような感覚である。近い将来のメルセデスの乗り味の方向性を声高に語っているような気がした。
■メルセデスAMG EQS 53 4MATIC+
・全長×全幅×全高:5225×1925×1520mm
・ホイールベース:3210mm
・トレッド(前/後):1660mm/1625mm
・車両重量:2670kg
・乗車定員:5名
・最小回転半径:5.3m
・システム最高出力:484kW(658ps)
・システム最大トルク:950Nm
【フロントモーター】
・電動機種類(型式):交流同期電動機(EM0031)
・最高出力:174kW/4858-6937rpm
・最大トルク:346Nm/0-4858rpm
【リアモーター】
・電動機種類(型式):交流同期電動機(EM0028)
・最高出力:310kW/4918-6886rpm
・最大トルク:609Nm/0-4822rpm
・タイヤサイズ(前後):275/40R21
・ブレーキ(前後):ベンチレーテッドディスク
・サスペンション(前/後):4リンク式/マルチリンク式
・車両本体価格(消費税込):2372万円