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ヒッチハイクの女性を助手席に乗せて「ラッセン・ボルカニック国立公園」へ! トヨタ「ハイラックス」の旅は道連れ──米国放浪バンライフ:Vol.14

デバステイテッド・エリアの「ドル」。快調に山道を登り切った

アメリカを気ままに放浪3カ月:27日目~29日目

 これまで2度にわたりアメリカを放浪してきた筆者。還暦を過ぎた2022年4月から7月にかけて、人生3度目のアメリカひとり旅にチャレンジしてきた。相棒は、1991年式トヨタ「ハイラックス」をベースにしたキャンピングカー「ドルフィン」。愛称は「ドル」。ロサンゼルスからサンフランシスコを経て、さらに北上してラッセン・ボルカニック国立公園を目指します。

早朝のカントリー・マーケットでお買い物

 レディング近郊のサービスエリアを早朝に出て、ラッセン・ボルカニック国立公園を目指す。田舎道を50マイル(約80km)ほど走り、国立公園まであと20マイル(約32km)という地点にカントリー・マーケットがあった。

 カントリー・マーケットとは、いわゆるよろずやで、缶詰や菓子パン程度の食料品、カー用品、衣料品、キャンプ用品、薬、酒、タバコ、お土産、文房具など広く浅い品ぞろえ。ぼくはこういうショップをぐるりと見て回るのが大好きで、ときどき掘り出し物を発見する。今回もあれば欲しいと思っていた肉料理用のナイフ4本セットを2ドル35セントでゲットした。

不思議なヒッチハイカーを乗せてみた

 買い物を終えてガソリンを入れていると、コーヒーを片手に持った60代後半と思われる女性が現れ、「こっちに行く?」と東の方角を指している。身なりはお世辞にも立派とはいえない。

「そうですけど」と答えると、「乗せていってくれ」という。ようするにヒッチハイクである。「どこに行くんですか」と聞くと、「ベガス」と答えた。近くにベガスという町があるのかと思って「どのあたりですか」と聞き直すと、「ネバダ州ベガス」と言い直した。ラスベガスのことか! ラスベガスまでは600マイル(約960km)近くある。いったい、どうするつもりなんだろう。

「ぼくは国立公園に行くから、この道からすぐに外れちゃいます。別のクルマを探したほうがいいですよ」と助言したが、「いいんだ」という。結局、助手席に乗せることになってしまった。荷物は小さなバッグがひとつ。ちょっと日本人的な顔立ちで、もしかしたらネイティブの血が混じっているのかもしれない。

「ベガスに親戚でもいるの?」と聞くと、小さく頷く。どことなく、4月に13回忌を済ませたばかりの、ぼくの母親に横顔が似ていなくもない。

 朝8時半、ビジターセンターの駐車場に到着したが、まだオープン前でほかにクルマもいない。「キャンプ場まで一緒に来たら? チェックアウトするクルマがたくさんいるかもしれませんよ」と声をかけたが、「ここでいい。ありがとう」といって、無人のビジターセンターに向かって歩いていってしまった。引き止めるのもおかしいので、ぼくたちはそこで別れることになった。

5月26~28日 ラッセン・ボルカニック国立公園

 1915年5月22日、ラッセン山の山頂が大噴火を起こした。たまたまその場に居合わせた地元のアマチュアカメラマン、ベンジャミン・ルーミスが決定的な瞬間を撮影し、ルーミスはその後も定点で火山の変化を記録し続けた。彼が撮影をしたポイントはデバステイテッド・エリア(破壊されたエリア)という観光スポットになっている。

 山の周囲にあった森が溶岩で消え去り、そこに長い時間をかけて森が再生していく記録は興味深い。また、山頂から飛んできた大きな岩もそのまま「展示」されていて、噴火の威力を肌身に感じることができた。

湖畔のトレイルからラッセン山を撮影

 本来なら現在の火山活動が見られる、日本でいう「地獄」エリアなどがあるのだが、まだ公園内の道が一部しか開通していないため、観光のポイントは限定されていた。雪は溶けているのだからオープンしてもいいように感じるが、道路標識や観光案内、トレイルの安全を確認するのに時間がかかるのだそうだ。広大な敷地を管理するには、想像以上の労力が必要なのである。

 滞在したマンザニータ・キャンプグラウンドはマンザニータ湖の近くにある。初日はゆっくりと湖畔一周のトレイルを散策し、湖ごしに見えるラッセン山も撮影することができた。驚いたのは、上空を悠々と滑空していたタカが、突然、ものすごい勢いで水面に突っ込んだこと。きっと空から魚を探していたのだろうが、あの高さから魚を見つけ、さらには強烈にダイブする生命力には舌を巻いた。動物たちはみんな、ものすごい力を持っている。

次に目指すのは大好きなシャスタ山

 翌日は、中級者向けのクラッグレイク・トレイルを歩いたが、戻ってくるハイカーたちの顔色がもうひとつ冴えない。ようやく湖に着いて、その理由が分かった。湖はすっかり干上がっていたのだ。昨年の夏から続くカリフォルニアの旱魃(かんばつ)は、本当に深刻だ。

 キャンプ場に2泊、さらにその近くのKOA(Kamp Of America:全米チェーンのキャンプサイト)に1泊してラッセン・ボルカニック国立公園の滞在を終えた。翌日からはさらに北上、大好きなシャスタに向かう予定である。

 なお、初日にデバステイテッド・エリアを見学した後、ビジターセンターに寄ってみた。すでに3時間以上が経ち、駐車場は多くのクルマで埋まっていた。ぼくもクルマを降りてビジターセンターやブックストアに戻ってみたが、彼女の姿はもうどこにもなかった。

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