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開発者が語る! 日産「R35 GT-R」搭載の「VR38」エンジン開発秘話。レース仕様「RB26」エンジンのノウハウが活かされていた!

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TEXT: GT-R Magazine 野田航也  PHOTO: 小林 健(GT-R Magazine)

気筒間バランスを整えることでレスポンスと伸び感を追求した

 第3世代のR35GT-Rでは、トランスミッションをリヤに配する独立型トランスアクスルレイアウトを採用。重量物をなるべく車体の中心に搭載するため、エンジンもフロントミッドシップに適した全長の短いV型6気筒のVR38DETTが新規開発された。

R35GT-R透視図

「当初は最高出力420psで開発がスタートしました。ただし、将来的なアップデートも考慮してキャパシティ的には600psまで許容するエンジンを目標に開発しています。R35は街乗りからサーキットの全開走行まで“吊し”のままで楽しめるというのがコンセプトで、エンジンや足まわりをイジることなく高性能を発揮できることが求められました」

 助手席の人と会話をしながら300km/hという超高速巡行が可能で、世界一過酷なことで知られるドイツのニュルブルクリンクで最速タイムを記録する。それを吊し=市販状態で実現するということが、R35の開発チームに課された命題だったのだ。そんな中で、仲田氏がエンジン開発で最も拘ったのは「気筒間バランス」だったという。

「直列6気筒のRB26DETTは偶力で言うと回転バランスは理想的ですが、過給器付きで且つ6連スロットルを採用しており、そのメリットがある一方で気筒間バランスを整えるのがけっこう難しいエンジンなのです。対して、V型6気筒のVR38DETTはシンメトリーレイアウトとすることで、左右バンクの吸気をバランスさせることができると同時に、車体側のストラットハウジングに逃げを設けてもらったことで、吸気サクションパイプをなるべく直線的にコレクターへと導くことができました」

「また、シリンダーブロックはライナーレスとし、プラズマ溶射ボアを採用した点も大きいです。ライナーを入れていないためブロック内部の水通路に余裕ができ、各シリンダーの温度を揃えられることで、気筒ごとの燃焼の均一化を図ることができています」と仲田氏は説明する。

ノーマルでサーキット走行にも耐える造り込み

 さらに、VR38にはユーザーが手を加えることなく安心してサーキット走行を楽しめるための策も盛られている。

「オイルパンの前側を膨らませる形状とすることで、つねにストレーナーの先がエンジンオイルに浸かる設計としています。クルマが飛んだり跳ねたりするニュルでは高G対応のオイル供給システムが不可欠であり、ブロックからヘッドにオイルが逆流しないよう油落としの通路をクロスさせるなどの対策も盛り込みました。また、サーキット全開走行後にクーリングをせずに急にエンジンを止めても壊れないような設計となっています」

 RB26でサーキット走行を楽しむにはオイルの片寄りを防ぐためにオイルパンにバッフルプレートを入れたり、空冷式のオイルクーラーを装着するなどそれなりの「対策」が必要だ。しかし、VR38はノーマルの状態でそれらをすでに備えている。RB26のレース用ユニットやチューニングメニューを手掛けた経験が随所にちりばめられていると言える。

 仲田氏は現在、日産自動車のパワートレイン・EV技術開発本部でe‒POWERのパワートレイン主管を務めている。

「VR38は2000rpm台からでもクルマが前に押し出されるようなトルク感と、高回転域まで息の長い加速が続く伸び感を重視して造り込みました。どこから踏んでも速い。それが開発の狙いでした。その特性は現在担当している電動ユニットでも探求しているテーマです」

 RB26の潜在能力を引き出し、R35の礎と言うべきVR38を世に送り出した仲田氏。GT-Rに相応しいユニットに求められるモノは何か。開発者の想いはこの先も受け継がれていくはずだ。

(この記事は2022年9月30日発売のGT-R Magazine 167号に掲載した記事を元に再編集しています)

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