BMWもクルマ好きには型式などで呼ばれる
歴史あるクルマとなれば、クルマ好きではなくても型式もしくはモデルコードなどで呼んだりするもの。現在のトヨタ「GR86」の語源となった「AE86(ハチロク)」は、もはや「カローラ・レビン」や「スプリンター・トレノ」よりも知名度が高く、価格高騰の話題があふれる日産「スカイラインGT-R」も「R32」や「R33」などと呼ばれることが多い。
それは輸入車にも当てはまり、BMWも単に「3シリーズ」と言ってもいつのモデルなのか解らないために「E●●」、などと呼ばれている。そこでBMWの型式を、3シリーズを中心に紹介する。
まずは「E」型からスタート
まず「E」で始まる型式のスタートは、第二次世界大戦後となる1957年に登場した「ノイエクラッセ(新クラス)」と呼ばれるE113型セダン、E114型2ドアなどが始まりのようだ。
「E」はドイツ語の「Entwicklung(エントヴィックルング:発明や開発を意味する)」の頭文字と呼ばれており、このころはスタッフが理解するためになんらかの社内の決まり事で「E●●」とつけていたと考えられる。
その後いくつかのモデルを経て現在の「E」に繋がるE9型が登場。ノイエクラッセの上級版として「2000」に始まり、レースでも活躍した「3.0CSL」(1971年登場)などで知られるモデルだ。1968年には日本では「マルニ」の愛称で知られる「2002ti」のE10型が登場する。Eと2桁の数字が定番となるのである。
そして1972年、初代「5シリーズ」(4ドアセダン)にあたるE12型を発売。世界初の量産ターボ車と言われている「2002ターボ」は1973年にE20型として登場しているため、空いている数字は開発を検討したものの発売されなかったモデルと言われていた。また、数字の大小と発売時期が前後することも多いことから、単純に開発がスタートしたモデルに番号が振り分けられていたと考えられる。
その後は、初代「3シリーズ」となるE21型(2ドアセダンとカブリオレ)、E23型初代「7シリーズ」(4ドアセダン)、E24型初代「6シリーズ」(2ドアクーペ)を発売。「M」の名を一躍知らしめたスポーツカー「M1」はE26型、2代目5シリーズ(4ドアセダン)がE28型となっており、1982年に発売されたE30型3シリーズは日本でも大ヒット。BMWがお馴染みのモデルとなるのである。
そんな2代目3シリーズは2ドアセダン、4ドアセダン、カブリオレとツーリングが設定されていたものの、型式はすべてE30型。初代「M3」もE30型であり、個性的なオープンの「Z1」のみE30/Z1型となるようだ。
E3X型が続々と登場していく
そしてE31型が「8シリーズ」、E32型が2代目7シリーズ、E34型が3代目5シリーズと数字を続けながらも、3代目3シリーズはE36型。一部数字の抜けはあるものの、ほぼ連番で続いており4ドアセダンと2ドアセダン、ツーリング(ワゴンは日本未発売)がラインアップされたが型式はE36のままだった。
面白いのは大人気となったコンパクトの名で知られる3ドアハッチの「ti」シリーズは、基本はE30型をベースとしてE36型の良いところを合わせた仕様だったがE36/5型を名乗っている。それをベースとしたオープンモデルのZ3もE36/7がロードスター、クーペがE36/8となっていた。
そして4代目3シリーズのE46型が登場する。4ドアセダン、2ドアセダン(クーペ)、カブリオレ、ワゴンのツーリングとコンパクト(今回の仕様はE46型同等)はすべてE46型となる。コンパクトがE46/5で、4ドアセダンがE46/4、ツーリングがE46/3、2ドアがE46/2、カブリオレがE46/Cとなる説もあるのだが詳細は不明だ。
筆者はE46型M3を所有していた際に「E46/2ですか?」と聞いたことがあるが「46はヨンロクで、そういう区分はされていないのでは?」という回答をもらっている。
E46登場後に発売され、映画で話題を集めたボンドカーの「Z8」はE52型。元祖高級SUV(BMWではSAV)の初代「X5」は、E39型5シリーズがベースと言われながらもE53型となっており、やはりEから始まる数字は開発が始まった順番ではないか? と言われることも納得できる。
4代目7シリーズ以降から傾向が変わる
そこから開発順番とボディスタイルを明確にさせようという感じが見えたのが4代目の7シリーズで、4ドアセダンがE65型、ロングホイールベース仕様がE66型、安全性強化仕様がE67型、水素エンジンがE68型となっている。7シリーズには以前にもロングホイールベースや安全強化型が発売されていたが型式は同じ。4代目で分けたことから、おそらくBMWの社内でも分かりやすさを検討したのではないだろうか。
その後のE60型セダンとE61型ツーリングの5シリーズをベースとした、2代目X5がE70型となり、E71型がX5のクーペ仕様である初代「X6」、E72型はそのハイブリッド仕様だ。
3シリーズで言えば、5代目の4ドアセダンがE90型、ツーリングがE91型、クーペがE92型、カブリオレがE93型となっていて非常に分かりやすい。つまりEから始まる最初の数字がボディもしくはシャシーを表していて、下一桁がバリエーションを表す。6代目も同様で、「E」を使い切り、次の「F」から始まるF30型6代目3シリーズも、4ドアセダンがF30型でツーリングがF31型だ。
そして新たに派生した3シリーズをベースとした、2ドアの「4シリーズ」がクーペはF32型、カブリオレがF33型を名乗っており、4ドアのグランクーペはF36型となっている。じつは途中に日本ではあまり人気がなかった背の高いクロスオーバースタイルの3シリーズ グランツーリスモ(F34型)というモデルがあり、かなり連番となっていた。
現行モデルはというと「F」を使い果たしたために「G」が使われており、現行3シリーズの4ドアセダンがG20型、ツーリングがG21型、2代目4シリーズのクーペがG22型、カブリオレがG23型、グランクーペがG26型を名乗り、3代目「Z4」はG29型で同サイズのFRらしく関連があることが窺える。
Mモデルは現在もベースとは異なる2桁が与えられる
例外がM3で、初代はE30型だったが、2代目E36型は前期と後期の排気量の違いによって、M3B(3.0L)とM3C(3.2L)と呼び分けられており、先に紹介したが3代目はE46型となっている。そして4代目もボディバリエーションに合わせてE90、E92、E93型となり、それぞれ4ドアセダン、クーペ、カブリオレとなっている。
ところが5代目はM3がF80型、初代「M4」がF82型、そしてM4カブリオレがF83型を名乗っており、ベースの3シリーズと4シリーズがF3X系だけに、どうにも規則性に関連があるようなないような。
同じように、X5はF15型、X6はF16型を名乗るのだが、MモデルとなるとF85型が初代の「X5M」で、そのクーペの「X6M」がF86型となっている。「M2」も初代2シリーズFRはF22&F23型、FF系がF44、F45、F46型(FFの2代目1シリーズがF20&F21型)なのに対し、F87型。M2は従来通りFRであり、基本部分は3シリーズのものが使われたことが窺える。
どうやらこの時期にもなんらかのルール変更があり、Mモデルは独立したモデルとして分けられたのだろう。BMWの広報に質問してみたところ、「数字に規則性はないと思われます」と回答をいただいている。
現在では「G」も使い果たすことになり、「U」と「i」シリーズ(電気自動車)の時代に入ろうとしている。ちなみに最新の7代目7シリーズはG70型だ。もはや「サンロク」や「ニーマル」では通用せずに、E36、G20とアルファベットも言わないとわかりにくい時代が来た。
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長い間3、5、7の基本モデルと、一時期はクーペである6と8といったモデルのみだったBMWも、現在は大きく変わった。MINIもあり、1や2といったコンパクトなモデルも重要だ。そして先鞭をつけたSUVも激戦区であり、電気自動車も外せない。数字が増えるたびに開発陣は膨大な仕事量に忙殺されているのでは? と感じてしまう。
とはいえ最初の数字はそのモデル用の基本シャシーを表すようであり、下一桁はボディ形状を表す数字のようだ。これ以上は複雑にならないでほしい。古くから知るものとしては、もう覚えられなくなってしまう!