できるようにしておいて損はない技術「左足ブレーキ」
今やモータースポーツの世界では、ほぼ2ペダルドライブで左足ブレーキが標準となっている。ならば、一般人でも左足でブレーキを踏もうとなるのは当然の流れと言える。左足ブレーキのメリットと、正しいやり方を解説しよう。
サーキットでは2ペダルならではのドラテクが進化
F1を筆頭にレースの世界はほぼ2ペダルドライブになった。日本でもスーパーフォーミュラはもちろん、スーパーGTのGT500クラスもGT300クラスも全車2ペダルだ。ジュニアフォーミュラと呼ばれるカテゴリーも2ペダルで、現在3ペダルMTが使われているのはスーパー耐久シリーズや、FJなどの地方選手権カテゴリーくらい。カートからフォーミュラの世界に入り、スーパーGTに乗るドライバーでは「右足でブレーキを踏んだことがない」なんて若手ドライバーもいるほどである。
ほとんどのカテゴリーが2ペダルということで、当然左足でブレーキを踏むのが主流だ。そのメリットはといえば、そもそも足が2本でペダルが2個なわけで、自然といえば自然なことである。
レースの世界ではそのメリットを活かして、アクセルとブレーキをオーバーラップさせている。具体的には、ストレートエンドでフルブレーキするとき、アクセル全開のままブレーキを踏む。それからアクセルを戻す。オーバーラップさせることで急激なノーズダイブを抑えて、安定したブレーキを可能にする。
高速コーナーでもアクセルは全開のまま、ブレーキを軽くかけてクリアすることがある。これも姿勢が安定する。ターボ車の場合、再度ブースト圧が高まるまでタイムラグがないので、コーナー脱出後の加速も良くなる。
そして高等テクニックとしては、ブレーキを残しながらコーナー進入時にリアタイヤがスライドし始めた時、ブレーキはそのままでわずかにアクセルを踏むことで荷重をリアに移し、スライドを抑えることができる。これは革新的な技術。それまでは進入時のオーバーステアはどうしようもなく、進入スピードを抑えるか、もっとアンダーステアなセッティングにするしかなかった。
それが左足ブレーキでコントロールできるようになったので、以前よりももっと回頭性よく、進入時にオーバーステア気味にクルマをセッティングできるようになったのだ。
ストリートでも細かい操作ができるメリットは大きい
われわれ一般人の場合、いきなりそこまでは無理にしても、アクセル全開中にブレーキをわずかに踏み始めるとか、高速コーナーでアクセルを踏んだままブレーキを当てて曲がるなどは使えるテクニックだ。
だが、気をつけたいのは最近のクルマだと、アクセルを踏みながらブレーキを踏むと、自動的にスロットルが絞られてしまう制御が入っている。わずかな時間なら問題ないが、1秒くらいオーバーラップすると急にスロットルが閉じて、ガクンと減速してしまうことがあるのだ。
では、ストリートではどう役に立つかというと、アクセルとブレーキの踏み変えの速さが役立つ。とはいえ、ストリートで緊急回避的に使うというよりも、車庫入れするときに左足でブレーキが踏めると細かく位置が調整できるとか、コインパーキングの踏み板を乗り越えるときに細かく操作できるなど、そういった生活シーンでのメリットが大きい。
もちろん完璧に左足ブレーキをマスターすれば、いざ何か飛び出してきたときにも、右足でブレーキを踏み変えるより短い距離で止まることができる。
しっかり身体を支えてくれるシートが必須
では、どうやって修得すればいいのか。コツとしてはまず、シートとペダルをきちんとすることが重要。最近のペダルは左足で踏む前提で大きくなっているが、そうでない場合はプロショップでペダルの大きさを直したり、位置の補正などが必要である。
シートもじつは大切だ。通常の右足ブレーキドライブの場合、無意識に左足はカラダを支えている。それができなくなるのでカラダが不安定になりやすく、ブレーキ操作もやりにくくなる。そういった状況で左足でブレーキを踏みにくいと感じている人も多い。フルバケットシートとは言わないが、サイドサポートの高いシートにすると左足でブレーキを踏みやすくなるのだ。