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マクラーレンみたいなBMWが存在した! 3人乗りリヤエンジンの「Z13コンセプト」とは

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TEXT: 原田 了(HARADA Ryo)  PHOTO: 原田 了

BMWは新たなシティカーを模索していた

 それではもう少し具体的に、BMW Z13 Conceptのメカニズムについて紹介していきましょう。先にも触れたようにフレームはアルミの押し出し材で構築したスペースフレームで、そのリヤ部分に2輪用のエンジンを転用して搭載していたのです。

 いくつかの資料をひっくり返してみたのですが、そのマウント位置はクルマのボディ後部であることははっきりしていますが、これをミッドエンジンと判断するのか、あるいはリヤエンジンと判断するのかは意見の分かれるところ。

 ここではとりあえず、リヤアクスルの上に搭載されている、としておきましょう。2輪から転用されたエンジンはBMWが長い歴史を持っている水平対向エンジンではなく、直列4気筒の1093cc(ボア×ストローク=70.5mmφ×70mm)で最高出力は2輪仕様の100psから85ps(諸説あり)までパワーダウンされていました。おそらくはよりトルクを太くするための再チューニングの結果と思われます。

 ただし車両重量が830kgと国産の軽自動車並みに軽く仕上がっており、シティカーとしては十分以上のパフォーマンスを持っていました。そう、BMW Z13 Conceptはスポーツカーではなく新たなシティカーを模索していたのです。

 考えてみれば、戦後すぐにBMWの経営を支えたBMWイセッタは、2輪用のエンジンをリヤに搭載したシティカーでした。フロントに設けられたドアは、まるで冷蔵庫のようなデザインでしたが、現在の法規ではとても認めることができないパッケージとなってしまいました。

 それでもBMW Z13 Conceptのように“通常の”ドアを持ち、エンジンを取り払ったフロントノーズを備えていることが、対衝突においてはクラッシャブルストラクチャーとして機能するだけに、より現実的なパッケージと考えられます。

 BMW Z13 Conceptのボディサイズは全長×全幅×全高が、それぞれ3440mm×1640mm×1320mmで車両重量は830kgとなっていて、これはトヨタのコンパクトモデル、パッソ(3680mm×1665mm×1525mmで910kg)と比べてもひと回り小さく、そして80kgも軽く仕上がっています。乗車定員が3名であることをどう考えるかによっても変わってきますが、十分に“可能性の見える”データです。

結果的にミニに駆逐されてしまった

 ここで少しうがった見方をするならばBMWは、イセッタを現在に蘇らせようとしたのかもしれません。痩せたアリストテレスではありませんが、2輪用に力を入れて開発した直4ツインカム・エンジンと、徹底的に軽量化を追求してアルミ押し出し材で構築したスペースフレーム。

 まさに現代版のBMWイセッタとしてよみがえるべき1台だったように思えてなりません。ただし、残念ながらBMW Z13 Conceptが市販化されることはありませんでした。最大の理由はBMWが、BMW Z13 Conceptを発表した翌1994年に、ブリティッシュ・エアロスペース(BAe)からローバー・グループを買収したこと。

 これによりミニ……いわゆるBMCミニを手に入れたBMWは、新たなコンパクトカーを絶え間なく開発する必要がなくなったのです。1959年に登場してイギリス国内からバブルカーを駆逐してしまったミニは1990年代に再び、BMWが新たなコンパクトカーとして開発を進めていた(可能性を探っていた)BMW Z13 Conceptも駆逐してしまったのです。

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  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • ライター。現在の愛車は、SUBARU R1、Honda GB250 クラブマン、Honda Lead 125。クルマに関わる、ありとあらゆることの探訪が趣味。1955年、岡山県倉敷市生まれ。モータースポーツ専門誌の地方通信員として高校時代にレース取材を開始。大学卒業後、就職して同誌の編集部に配属。10年間のサラリーマン生活を経て90年4月からフリーランスに。モータースポーツ関連の執筆に加え、オートキャンプからヒストリックカーイベントまで幅広く取材。現在ではAMWに、主にヒストリー関連コラムを執筆。またライフワークとなった世界中の自動車博物館歴訪を続け、様々な媒体に紹介記事を寄稿している。
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