登場から70年、ブレることなく進化を続ける「SL」
メルセデスの至宝「SL」の歴史は70年近くになる。驚かされるのは、そのコンセプトがまったくブレることなく受け継がれていること。初代「300SL」のデビューから、2022年日本に輸入された「SL43」まで、完璧に同一線上のベクトルに乗っている。
新型ではソフトトップに回帰
ただし、技術の進歩に合わせて改善は繰り返されている。SLの定義のひとつは「オープンカーであること」なのだが、そのオープントップが、金属的なバリオルーフから布製のソフトトップに回帰した。
オープンカーにとっての欠点であった金属製のルーフを電動で開閉させたのは先々代R230である。それまでも開閉式のメタルトップは存在していたものの、内蔵したソフトトップを引き出すには、それを覆うメタルトップを手作業で取り外さなければならず、それはなかなかの重労働だった。気軽に爽快なオープンエアを堪能するわけにはいかなかったのだ。
それを解消したのがR230のバリオルーフなのだが、新型ではソフトトップを採用。耐候性への不安を解消したことを意味するのであろう。
それによってルーフの軽量化に成功した。だがソフトトップ化の本来の目的は、布製ならではの風合いの豊かさにあるのではないかと想像する。テキスタイルは高度になり、クローズドでのスタイルが美しい。経年変化を予測することはできなかったが、ルーフが波打つくことなくパリッと張っている。もちろんリアはガラスであり、長く付き合っても黄ばむことはない。
そしてソフトトップによって格納がたやすくなり、結果として2+2のスペースを生んだ。だが、大人が着座するには不自然なほど狭い。メルセデスでもそれは承知のようで、「身長150cm以下の人……」との注意書きがある。日常は荷物置き場としての機能だろう。