30数年で4世代、キャラクターも相場の幅も極めて多彩
世界で一番売れている2人乗り小型オープンスポーツカーであるマツダ「ロードスター」。ヒットの理由はさまざまですが、2シーターオープンのFRという現代では希少なパッケージでありながらも手ごろな価格であることが大きな理由のひとつです。そんなロードスターにさらに手ごろに乗るなら中古車となるわけですが、今の相場観や狙い目モデルはどうなっているのでしょうか。
2001年式NB型ロードスターで普段使いからサーキット走行までこなしている若手モータージャーナリストが、世代ごとに解説します。
初代NA型:もはやネオクラ、買うなら焦らずじっくりと
まずは1989年~1997年まで販売されていたNA型、「ユーノス・ロードスター」。すでにネオクラシックの領域に入っているNAはひと昔前のようにガンガン走るような遊び道具としての扱われ方よりも、きれいにレストアして乗るような傾向です。また以前よりも相場感が上がっているのも事実で、そのため、状態と価格が見合っていない個体も多くあります。オールペンしたばかりで綺麗に見えてもじつはボディには錆が……なんてこともNAではよく聞く話。
「どうしてもNAが良いんだ!」であれば止めはしませんが、「ロードスターが欲しい」のならばNAはオススメとは言えません。NAを購入するのなら、しっかりと現車確認をして、状態をチェックすべきです。マトモな状態のNAを買うなら200万円ぐらいしてしまいますが、しっかりとレストアされた個体を買うか、もはやレストア前提の心持ちで、ヤフオクなどで安い車体を買ってきて(ボディのサビは要チェック!)レストアするかの2択がオススメと言えそうです。ボディの程度が良いATの個体を買ってきてMTに載せ替えるのも手でしょう。
1.6Lから1.8Lになったり、1.8Lになったあとも改良が行われたりと年式的な違いもありますが、それよりも個体の状態が重要なのがNAの中古車選びと言えます。
筆者が個人的にNAを購入するならば、自分の好みに近い仕様にカスタマイズされた仕様を気長に待つという選択をします。ノーマル然としたレストアよりもカスタマイズされた個体は値段が安くなりやすい傾向ですし、手がかけられた個体は普段のメンテナンスもしっかりと行われてきたケースが多いからです。といってもこのような個体も150万円ほど予算がないと狙えないのも事実。NAが欲しいならば年式度外視の予算と、状態の見極めが重要となります。
2代目NB型:バリエーションもタマ数も豊富で選び甲斐あり
1998年から2005年まで販売されていた2代目・NB型。この世代はバリエーションが多いのが特徴です。そのため、NBを選ぶなら自分好みの仕様をある程度絞るのも重要と言えます。速さを求めるなら2000年のビッグマイナーチェンジ以降の1.8LでMTの個体がオススメですが、ロードスターの雰囲気を味わうのであれば1.6Lもアリな選択肢でしょう。トランスミッションも1.6Lは5速で1.8Lは6速ですが、5速はマツダ内製でシフトフィールはこちらの方が良いです。また、相場も1.6Lの方が安いので、スポーツ走行を考えている人や、特段速さにこだわりたい人でなければ1.6Lの方がオススメです。
年式的には2000年のビッグマイチェン以降の後期がオススメ。フェイスリフトと1.8Lエンジンのパワーアップが目玉のマイナーチェンジでしたが、細かな対策が施されていて1.6Lでも後期の方が各種トラブルは少ない印象を受けます。中古市場はNAの高騰に付随する形で、基本的なコンポーネントが同じであるNBも高騰傾向にあります。とくに1.8Lの後期は走行距離が少ない個体ならば150万円を超える個体もザラにあり、そこまで出すならばNCの方がベターと言えます。1.8L後期を買うならば過走行気味でメンテナンスがしっかりとされた、ボディの状態がいい個体がオススメです(それでも100万円程度は必要となります)。
1.6Lの後期は80万円程度の予算で状態の良い個体が狙えますが、こちらも1.8Lと傾向は似ているので、過走行気味でメンテナンスがしっかりとされた状態の良い個体がオススメです。
また、NBはクーペやターボといった希少限定車が存在しましたが、こちらは状態にもよりますが、NBの中でもずば抜けて相場が高いです。余程のこだわりがない限りオススメとは言えません。
3代目NC型:「速い」ロードスターを求めるならコレ
2005年から2015年まで販売されていたNC型。「速い」ロードスターが欲しい人にはもっともオススメできる選択肢です。排気量が2.0Lへと拡大され、ボディサイズも3ナンバーになったため、「コンパクトじゃないからロードスターじゃない」と言われてしまうこともありました。しかし、実際に乗ってみるとノーズのシャープな感覚は間違いなく歴代ロードスターと同じものですし、ロードスター特有の軽快感もしっかりと味わえます。
NCを購入する際に大きなポイントとなるのが、前期型か、2008年12月のビッグマイチェン以降の後期型かという点です。後期はスペック上はあまり大きな違いがありませんが、エンジンの内部パーツも大きな変更を受け、レブリミットは500rpm引き上げられた7500rpmとなっているほか、ロールセンターが26mm下げられました。そのため、走りのベース車として選ぶならば後期型がオススメですが、10万kmを超えた個体でも100万円を超えてくるのが当たり前という相場観です。
安く楽しむ走りの素材で選ぶなら前期型のマニュアルがオススメ。たしかに後期の方が良いことは間違いないですが、チューニングベースとして考えるならば前期もナシではない選択で、80万円程度から狙うことが可能です。筆者としても今、NCに限らず、歴代ロードスターのどれかを買うならばNCの前期を買うかと思います。ただ、時おり過走行の後期が安く出回ることもあるので、状態次第ですが、それを待つのも選択肢のひとつと言えます。
4代目ND型:新車との天秤となるが過走行や修復歴車を狙う手も
そして最後に紹介するのは2015年から販売されている現行のND型。故障の心配やランニングコストを抑えて乗りたいのならNDがもっともオススメです。ただ、新車と比べてお買い得感があるかというと微妙なところ。たしかに2015年や2016年の初期型であれば、150万円前後から狙うことができますが、修復歴があったり、10万kmを超えていたりする個体がほとんどです。
また、ND型は2018年に大幅改良が行われており、それ以降と以前では完成度も異なってきます。買うなら2018年以降がオススメなのは間違いないですが、250万円付近がボリュームゾーンと考えた方が良いでしょう。乗り出し価格で考えればプラス50万円~で新車が狙えるので、この差をどう捉えるかは人それぞれと言えそうです。
筆者が今NDを狙うならば、大幅改良後の走行距離が多くて安めの個体か、走行に支障がない程度の修復歴アリの個体を検討するかと思います。
ボディの状態が最優先
約30年前のNAから現行のNDまで中古車をざっくりと振り返ってきましたが、基本的に世代やカラー、パワーユニットなどでお気に入りのロードスターを絞ってから探すのがベストと言えます。また、ロードスターに限った話ではないですが、中古車をチェックする場合はボディの状態が命です。ロードスターは古くてもまだ比較的パーツが出る車種のため、幌や動力関係は後からどうとでもなることが多いので、お気に入りの仕様とボディの状態で個体を探すのが一番と言えるでしょう。