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旧ソ連時代の摩訶不思議なクルマとは? ホバークラフトと4輪が合体した水陸両用車「GAZ-16A」はSF漫画そのものでした

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TEXT: 長尾 循(NAGAO Jun)  PHOTO: 長尾 循/AMW編集部

4輪の高速移動とホバークラフトの走破性を兼ね備える「夢のクルマ」

 GAZ-16Aは、「ボルガ」の名称でゴーリキー工場で生産されていた乗用車GAZ-21のシャシー・コンポーネンツに、やはりゴーリキー工場製の政府高官専用車GAZ-13「チャイカ」の5.5L V8エンジンを組み合わせた構成で、道路上では自動車として最高時速170km/hで走行可能。そのシャシーを油圧でボディ内に格納すれば、今度はボディの前後に水平に備えたファンとリアのプロペラを利用して、ホバークラフトとして未舗装地や水上も移動できるというものだ。

 舗装道路上を効率よく高速移動できるクルマの長所と、水上も含めたホバークラフトのクロスカントリー能力という長所を兼ね備えた多目的陸上車両で、実用化されれば、まさにSF映画に出てくるような「夢のクルマ」となるはずであった。

アイデアだけで突っ走ることができた時代の徒花

 1960年にゴーリキー自動車工場の設計実験部などが開発に着手し、GAZ-16として試作1号車を完成させた後、その正常進化版として、1962年にはこのGAZ-16Aが完成した。GAZ-16Aはたしかに自動車として高速道路はもちろん、通常のクルマでは走行不能な湿地や水上まで走行することができた。

 だが、複雑なメカを詰めこんだボディは全長7.5m以上、幅が約3.6mという巨体であり、そのわりには乗員も積載量も限られており、そもそも誰がどのような用途で使うのかというコンセプトも不明瞭なままだった。現在の目で見れば技術者の思いだけで暴走したプロダクトという感は否めない。結局、ごく少数のプロトタイプが作られただけで、GAZ-16シリーズの開発計画は頓挫した。

* * *

 どんなに斬新なアイデアとそれを可能とする技術も、ひとつボタンをかけ違えるとただ歴史の徒花となる。「夢のクルマ」GAZ-16Aのミニカーからはそんな切ないメッセージも伝わってくるようだ。

■Auto Cult(オートカルト)GAZ 16A 1962 メタリックシルバー
定価:1万8700円(消費税込)
型番:06039
問い合わせ:国際貿易 https://www.kokusaiboeki.co.jp

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  • 長尾 循(NAGAO Jun)
  • 長尾 循(NAGAO Jun)
  • 1962年生まれ。デザイン専門学校を卒業後、エディトリアル・デザイナーとしてバブル景気前夜の雑誌業界に潜り込む。その後クルマの模型専門誌、自動車趣味誌の編集長を経て2022年に定年退職。現在はフリーランスの編集者&ライター、さらには趣味が高じて模型誌の作例制作なども手掛ける。かつて所有していたクラシック・ミニや二輪は全て手放したが、1985年に個人売買で手に入れた中古のケーターハム・スーパーセブンだけは、40年近く経った今でも乗り続けている。
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