BMWの走りの理念は受け継がれている
さて、前置きが長くなってしまったが、ポルシェ356とタイカンの関係性を今回試乗したBMWに置き換えてみよう。かつて自然吸気直6エンジンから絞り出されるパワーを後輪で受け止め、麗しいステアリングフィールが好まれたBMW。直6のエンジンの回り方も官能的でもあった。きっとそうした従来からのBMWのDNAをM8も118dも受け継ぐべく、「BMWらしさ」がふんだんにトッピングされているに違いない。つまり、そういう味付けに全力でチューニングされているはずだ、BMWもドイツのメーカーであるし……というわけで、M8と118dは自然吸気直6でもFRでもなくとも、やっぱりBMWらしいなぁ、となるのである。そして、自らの目指す走りの哲学をしっかりと受け継いでいるという企業のあり方に、カスタマーは共感しBMWに乗り続けるのである。
とはいえ、通常はフロント0:リア100のFRであるM xDriveを搭載したM8ならばいざしらず、完全なるFFである118dにさえBMWらしさを十分に感じられるのは、感心するしかない。BMWもそこは十分に既存カスタマーでも使用に耐えられる基準を満たしたという判断の上でのFF化であったのだろう。
118dは、現代の318tiなのか?
試乗コースは、M8は大阪までの往復と深夜の首都高速に渋滞の都心部、118dは自宅のある横浜から千葉や埼玉へ毎朝取材の足として使用した。ワインディングなどを試す機会には恵まれなかったが、それぞれの車両を購入する人のメインでの走行シーンは十分に試すことができたと思う。
どちらにも「BMWらしさ」を感じ入ることができたと書いているが、それは2台が同レベルでというわけではない。しっかりと、E36/5 318tiコンパクトとE31 850CSiと同程度の違いがそこにはあった。たとえば高速道路上でのACCのしつけなど、繊細なM8に比べると118dは、少々荒削りに感じられるシーンが何度かあった。インテリアは同じデザインの方向性でも、細部の仕上げは当然ながらM8の方が格上であることは言うまでもないだろう。ましていわんや、エンジンフィールやステアリングフィールにおいてをやである。
M8の試乗車のオプション込みの価格(消費税込・以下同)が2811万3500円であるのに比べ118dは565万1000円と、5倍の差がある。ちなみに、1995年当時の318tiコンパクトの車両価格は295万円、850CSiが1680万円と、やはりこちらも5.7倍の開きがある。しっかりと値段の差とその差による格の違いも、そっくりそのまま受け継がれているあたりも、さすがBMWだなぁと唸らされるのである。
ちなみに、くだんの会食での会話は、当日その場でS氏本人に「それ、今度書く原稿で使わせてもらいますね!」と伝えたので、了承済みです。
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今回の『AMWリレーインプレ BMW118d編』は、2023年1月31日に発売予定の『BMW LIFE』でも読むことができます。