魅力たっぷりのクルマが登場した1973年
19世紀末にクルマが“発明”されて約130年。ここ数年は「100年に一度の変革期」とのフレーズが氾濫していた気もしますが、新年を迎えたのを機に50年前のクルマ……今回は輸入車を振り返ることにしました。
今から半世紀前の1973年は、国内でも2L以下ながら大排気量のハイパフォーマンスモデルが続々登場したことは、以前の国産車編でも紹介しました。もちろん海外でも、ハイパフォーマンスだったり先進的なコンパクトだったりとさまざまな魅力たっぷりのクルマたちが誕生していました。
世界中のクルマ生産台数の、圧倒的なシェアを占めていたのはアメリカでした。そして1950年代に入って生産を再開したイギリスとドイツ(当時は西ドイツ)、フランス、イタリア。そして1950年代半ばから本格的に生産を開始した日本の6カ国がリーディング・カントリーとして鎬を削る状況が続くことになりました。
この6カ国の中で1973年に注目されるモデルが登場したのはイタリアとドイツ、そしてフランスという、生産台数でこそ “新興国”に後れを取っていますが、今では自動車王国として名高い3カ国でした。
フェラーリとランボルギーニのスーパーカー対決頂上決戦が火蓋を切った
イタリアでは、スポーツカーに特化していたフェラーリに対して挑戦者であるランボルギーニが仕掛けたスーパーカー・ウォーズの頂上決戦を展開する2車が登場。一方、フランスでは小排気量のスポーツカーが、ドイツではハイパフォーマンスなスポーツモデルが注目を浴びていました。
イタリアで1973年に登場した2車とは、ランボルギーニ「カウンタックLP400」とフェラーリ 「365GT4/BB」です。ともにプロトタイプが登場したのは1971年のことで、ランボルギーニは春のジュネーブショーで、フェラーリは秋のトリノショーで披露されています。
ともに大排気量……カウンタックLP400は4L、365GT4/BBは4.4LのV12エンジンをミッドシップに搭載し、スーパーカーに必須とされていたリトラクタブルヘッドライトを装着しています。ただし、ミッドエンジンとリトラクタブルヘッドライトとともに、スーパーカーの“三種の神器”とされていたガルウイングドアに関しては、カウンタックは採用(正確にはガルウィングではなくシザース・ドアでしたが)していました。一方で、フェラーリは通常のヒンジ式ドアでした。
もう少し詳しく両社のメカニズムを見ていくと、ランボルギーニは60度のV12を前後逆に搭載し、トランスミッションを左右シートの間に置いてエンジン後方のデフに通じるシャフトがエンジンの真下を貫通するという独創のパッケージングを採用しています。
フェラーリはBB(ベルリネッタ・ボクサー)を名乗っていましたが、12気筒エンジンはボクサーエンジンではなく180度のV12です。2車に共通しているのが互いを意識し合ったハイパフォーマンスの“公称値”争い。先に登場したカウンタックLP400が(それまでの)フェラーリでもっとも高性能だった365GTB/4の最高出力352ps/最高速280km/hを大きく上まわる385ps/300km/hを謳ったところ、あとから登場したフェラーリ365GT4/BBは最高出力こそ380psとLP400には及ばない数値でしたが、最高速は302km/hと、LP400に対してわずか2km/hだけ上まわる“公称値”を発表。ライバル関係の激しさを感じさせたのです。