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『SPY×FAMILY』に登場するレトロなクルマの正体は? 旧東ドイツの国民車「トラバント」が「スパイファミリー」第1期オープニングに!

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TEXT: 原田 了(HARADA Ryo)  PHOTO: 原田 了/AMW編集部

シャシーが一新された「P601」は四半世紀以上のロングモデルに

 さらに1963年にはシャシーを一新した「トラバント601(P601)」が登場しています。『SPY×FAMILY』の劇中に登場しているのはこのモデルです。最大の変更点はボディサイズの拡大でした。全幅については実質的な拡大はなかったのですが、全長が3375mmから3555mmに180mmも延長されるとともに、全高も1395mmから1440mmへと45mmかさ上げされていて、居住スペースはずいぶん拡げられていました。

 1963年に登場したP601は1990年まで、四半世紀以上の長期間にわたって生産が続けられました。総生産台数は280万台を超え、旧東ドイツ国内では日常風景に溶けこむほどポピュラーな存在になっていました。

 この間、基本設計が変わることはありませんでしたが、細かな設計変更やアップデートは重ねられていました。エンジンなどはその典型で、排気量も変えられていませんが、P60型からP66型まで7タイプが登場しています。しかし、1980年代から1990年代にかけては世界的にクルマの排気ガス浄化が求められた時代で、その要求に対応するにはシンプルな2ストローク・エンジンでは無理がありました。

 そこで1990年に登場したのが「トラバント1.1」でした。これは提携していたVW社から「ポロ」用の4ストロークの水冷1.1L直列4気筒エンジンを調達し搭載したもので、ほかにもフロントブレーキをドラム式からディスク式に変更するとともに、サスペンションにもストラット式が採用されるなどシャシーもアップデートされていました。

 ただし、こうした改良によって価格が引き上げられてしまい、旧東ドイツの国内ではあまり多くは販売されず、生産台数も4万台弱にとどまりました。そしてそのほとんどがポーランドとハンガリーに輸出されたのです。

ラリーシーンでも活躍していたトラバント

 ちなみにトラバントは、モータースポーツで活躍したことでも記憶されています。P601にはラリー専用車両である「P800RS」が3台製作され、これはエンジン排気量を800cc(正確には771cc)までスープアップし、最高出力も約65psにまで引き上げられていました。実際に1980年代後半の世界ラリー選手権(WRC)でグループA仕様が活躍した記録も残っています。1986年シーズンからスポット参戦でフィンランドの1000湖ラリーに参戦を続けて毎年のように完走し、1989年にはクラス2~4位入賞を果たしています。

 ちなみに、トラバントとは「遠い親戚」にあたるヴァルトブルクもグループAで参戦した記録が残っています。東欧諸国のクルマと最先端技術を争うWRCのイメージは、簡単には結び付かないかもしれませんが、チェコのシュコダも含めてじつは古くから、根づいた活動を続けていたんですね。

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  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • ライター。現在の愛車は、SUBARU R1、Honda GB250 クラブマン、Honda Lead 125。クルマに関わる、ありとあらゆることの探訪が趣味。1955年、岡山県倉敷市生まれ。モータースポーツ専門誌の地方通信員として高校時代にレース取材を開始。大学卒業後、就職して同誌の編集部に配属。10年間のサラリーマン生活を経て90年4月からフリーランスに。モータースポーツ関連の執筆に加え、オートキャンプからヒストリックカーイベントまで幅広く取材。現在ではAMWに、主にヒストリー関連コラムを執筆。またライフワークとなった世界中の自動車博物館歴訪を続け、様々な媒体に紹介記事を寄稿している。
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