アメリカを気ままに放浪3カ月:33日目~34日目
これまで2度にわたりアメリカを放浪してきた筆者。還暦を過ぎた2022年4月から7月にかけて、人生3度目のアメリカひとり旅にチャレンジしてきた。相棒は、1991年式トヨタ「ハイラックス」をベースにしたキャンピングカー「ドルフィン」。愛称は「ドル」。ロサンゼルスを出発して国立公園を巡りながら北上し、1カ月が過ぎてようやくオレゴン州へと入りました。
6月1日 オレゴン州ではガソリンスタンドの作法もまったく違う
オレゴン州に入った。カリフォルニアはガソリンが高い、と耳にタコができるほど聞かされていたので、オレゴンではどうなのか、楽しみにしていた。すると、1ガロン(約4L)5ドル代前半、なかには4ドル99セントという、かすかに5ドルを切ったプライスもあった。カリフォルニアは6ドル半ばだから15%くらい安い計算だ。これなら州を越えて買いに来る人もいるだろう。
オレゴンに入ってから給油しようと思っていたので、相棒のキャンピングカー「ドル」のガソリンタンクはほとんどエンプティ。早速ガスステーションに入ると、隣のクルマの牽引車両がこちらにはみ出している。なんとかかわしてクルマを止めると、上半身の筋肉を白いTシャツで包んだいかつい男がストアから出てきて、まっすぐこちらに向かって歩いてくる。
「あれ、何かまずかったかな」と思いながらウインドウを下げると、怖い顔で「フィルアップか?」と聞く。面食らって、「はい」と答えると、「フィルアップでいいんだな」と念を押された。フィルアップとは満タンのことだ。「はい、フィルアップでお願いします」と答えると、男は給油を始めた。
後で分かったことだが、オレゴン州はセルフの習慣がなく、いまだにフルサービスが基本なのだ。怖い顔の男はガスステーションの従業員だったのである。ちなみに、オレゴン州とワシントン州はなにかとセットで語られるが、ワシントン州はセルフであった。
まだ雪が残っているけど……どうする?
オレゴン州での最初の目的地は、クレーターレイク国立公園だ。深いブルーの水面が美しい巨大カルデラ湖を、ぜひこの目で見たいと思ってきた。今回の旅のなかでも、大きな目標にしてきたスポットだ。
しかし、事前に集めた情報によると、まだ雪が残っていて国立公園のほとんどが閉鎖中で、リムビレッジと呼ばれるビジターセンターの一画だけがオープンしているということだった。
それならば、今回はパスして、南下してくる7月に寄るほうがいいかな、と考えたが、オークランドで泊めてくれた青年・ジェシがメールでそれを否定してきた。「リムを周回する道路が開通すると、人が押し寄せて大混雑になる。シンタロウ、人がいない今が、絶好のチャンスだよ!」
6月2日 クレーターレイク国立公園
前日、クラマスフォールズのRVパークに1泊し、一路クレーターレイク国立公園を目指した。リムビレッジに着いてみると、本当に雪の中であった。ビジターセンターもその日(6月2日)からオープンしたばかりで、リーダーらしい女性レンジャーがヒステリー気味にスタッフに指示を出していた。レストランもギフトショップも雪に埋もれたままの営業だ。
当然、トレイルも雪の中だ。ビレッジから延びる1マイル(1.6km)のディスカバリー・トレイルは、初心者向けの人気コースだが、これを歩くのに1時間以上かかってしまった。ただ、ジェシが言うように、ほかにハイカーはほとんどいない。絶景を見下ろすポイントを独り占めにした快感は至福だった。
遅い日没までのんびりと空を眺める
キャンプ場もクローズだったため、麓にあるキャビンを予約しておいた。1泊160ドルという、今回の旅のなかでは最高級の宿だ。リムにあるロッジに泊まれば、夕景や夜景をその場で見ることができるのだが、こちらは250ドルと手の届かない金額だった。
一度、チェックインするために麓に戻ったが、キャビンにいても退屈なだけだ。レストランで夕食を済ませ、夕景を撮影するためにふたたびリムに登った。夕景といっても暗くなり始めるのが午後8時半くらいで、10時近くまで薄明るい。リムにのんびりと佇みながら、雲が劇的に染まっていく様子を見届けた。
本当はそのままスターゲイジング(星空見物)もしていこうかと思ったが、駐車場は真っ暗になり、止まっているクルマもほとんどいなくなった。シャスタでの怖い記憶がよみがえり、適当なところで切り上げてキャビンに引き返すことにした。
なお、「ドル」はリムへの急坂を難なく2度、登り切った。オーバーヒートの不安は、この時点できれいに払拭された。
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