ドレスアップカー部門最優秀賞を受賞
東京オートサロン2023には、出展社数341社、出展車両台数789台にも達するメーカー・ショップが手がけたカスタムカーが集まった。そして、その中から、毎年恒例になっているのが特別審査員と来場者による投票によって選ばれる「東京国際カスタムカーコンテスト」だ。コンセプトカーやチューニングといった各部門に競合がひしめく中、エントリー台数も数多く、ひと際注目されるドレスアップカー部門において見事、最優秀賞の栄冠に輝いたのは、日本を代表するカスタム界のレジェンドであるヴェイルサイド・横幕代表が手がけた新型フェアレディZ「VeilSide(ヴェイルサイド)FFZ400」だった。
俳優サン・カンの愛車として
ヴェイルサイドと言えば映画『ワイルド・スピード』とのつながりが深いことでも知られている。そして、横幕代表は『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』でハンこと俳優サン・カンの愛車として登場したオレンジ×ブラックのマツダ「RX-7 Fortune(FD3S)」をきっかけに親交を深める仲となった。そんなサン・カンから2022年の7月に、2024年公開予定のあの映画で自身が乗るムービーカーを再び作ってくれないか、とオファーが入ったという。AMWでは、当時のことをヴェイルサイド・横幕代表から直接お話を伺うことができた。
「一番最初のオファーの段階では、クルマすら決まっていませんでした。何にしようか……てな感じで話していて、サン・カンが『S30フェアレディZ』が好きなので、それにしようかとも話しました。だけど、ちょっと古すぎるかなという意見から、次にヴェイルサイドのZ32ワイドボディはどうだろうと提案を受けたんですね。でも、それも今さらどうかと思って、映画が2024年の公開ならば、やっぱり新しいクルマの方がいいよね、と。それならちょうど新型フェアレディZがぴったりだという結論に至りました。
そこから、すぐにベースとなる車両を手配。どのように仕上げるかをサン・カンとの話し合いの中で決める予定でした。でもそのサン・カンから、『横幕さん、あなたは神業を持っている。だから、私たちがクルマの製作について口出す必要なんてない。ただ、多くの人にカスタムカーの魅力をこの映画を通じて知ってもらい、実際にカスタムカーを気軽に楽しんでもらいたいから、ひとつだけお願いできるなら、フェンダーを切らないで欲しい」という課題だけをらいました。
それを聞いた時に、逆に僕はワクワクしましたね。今どきはワイドフェンダーがあたりまえで、ボディ加工も特別なことではない感覚になっているよね。だから、世の中には凄い見た目のワイドボディ車がたくさん存在し、制限がない分だけ表現も自由にできる。だけど、今回はそこに制限をかけてカッコ良さを追求するとなると、フェンダートリムの形状工夫しか表現方法がなくなる。それをどのように仕上げて作ろうか? そして、ヴェイルサイドのコンプリートモデルらしく表現しようか? これは難題でしたけど楽しい時間でした。
自ら、フェンダーは加工することなくボルトオン装着可能とすること、そして、その幅は+10mmの範囲でデザインのすべてを収める、というルールを作って製作に挑みました。しかも、時間もあまり残されていなかったので、短い期間で本当に集中して取り組んだよね」