超高性能ガソリンエンジンの官能性はやはり捨てがたい
えりも岬には、なんとか日没前に到着できたが、この時点での、メーターに表示されていた平均燃費は11.4km/L.。都内から大洗港に向かう高速も、そしてえりも岬に向かう日高自動車道も、その先の一般道も淡々と走らせていたこともあるが、5L V8スーパーチャージャーの550psエンジンに2.1tの車体、強烈に太いタイヤ等からすれば、思いのほかの好燃費で、ひとまずホッとした。
えりも岬から140kmほど北上した幕別温泉に泊まり、2日目は、まず上士幌にある日本一広い公共牧場のナイタイ高原牧場に向かう。この牧場内に2019年6月にオープンした一面ガラス張りの展望カフェ、ナイタイテラスには、一度行きたいと思っていた。
訪れた時期はまだ草木の緑も濃く、左右に広がる牧草地をかき分けるように登っていくワインディングは爽快だ。5Lにスーパーチャージャーで過給するエンジンがもたらすトルクは強大で、気を抜くと速度が上がり過ぎてしまうので、どれだけアクセルを踏むのを我慢しておくか、といった感じすらある。
もっとも、その面だけで言うならば、最近のプレミアムブランドの上級EVには、瞬時に800Nmを超える最大トルクを発生するものもあるが、エンジンサウンドとともにトルクが盛り上がる高性能内燃機関の感覚は、官能性としてやはり捨てがたい。
ちょうどお昼どきだったが、ほぼ待ちはなくナイタイテラスの席を確保でき、ハンバーガーやポテトを注文。ガラス越しの眺めの素晴らしさで美味しさも増すというもの。
ナイタイテラスの駐車場脇には、いまどきとも言える「映え」のする撮影スポットとして、クルマ1台が置けるスペースがそこだけ四角く舗装を変えて用意されており、撮影待ちのクルマやバイクも並んでいたりした。
何年も放置されているマツダ・サバンナスポーツワゴンに再会
この日は阿寒湖畔の温泉宿に泊まる予定だったが、じつは行ってみたかったのは阿寒国立公園の最西端にある、周囲がたった2.5kmしかない湖、オンネトーであった。カヌーなども禁止されているので、自然そのままの姿が見られる神秘的な湖である。この日の湖面に雌阿寒岳と阿寒富士を綺麗に映していた。
ここは住所としては足寄町になるが、オンネトーの手前で、足寄町の道の駅「あしょろ銀河ホール21」に立ち寄る。ここ数年の間、ほぼ毎年に一度はここに寄る機会があったが、もう何年にもわたって、なぜか駐車場の真ん中付近に、マツダ「サバンナスポーツワゴン」の廃車が置かれたままで、見るたびに外も中も朽ちてきているので、どうにも忍びない。
この車両は、AP(排ガス規制対応車)なので1973年から75年式といったところだろうか。もう1台、サバンナの横に置かれた日産「シビリアン」とともにもの悲しげである。
まりもで有名な阿寒湖は数年ぶりだったが、以前の記憶よりも透明度も高く綺麗な湖になっているようにも思えた。しかし、今回もっとも印象に残ったのは、地元の方も滅多にないと言う、雲ひとつない摩周湖にお目にかかれたこと。これまで何度か訪れてはいるが、それでも展望台の階段を上り湖が見えたときには、感動! であった。この時期は木々も深い緑で、そのコントラストも見事だ。
見た目ゴツいタイヤとバケット形状シートは意外に優しい
ちなみに、都内からの移動を含め、2回目に給油した足寄町までの走行距離は約570km。のんびりと移動しているので、それほど距離は伸びていない。メーター上の燃費表示は10.8km/Lとなかなかじゃないか、と思っていたが、実燃費では10km/Lだった。それでもなんとか2桁に乗っている燃費は立派じゃないだろうか。
3日目は釧路市内に泊まり、釧路が発祥の地という炉端で夕食を。翌朝は釧路湿原周辺をひと周りして、帯広の豚丼を食べに向かう。帯広にも何度か訪れているので、有名豚丼店はいくつか行っていたが、今回初めて行ったお店の豚丼は絶品であった。いわゆる超有名店ではなかったのだが、ちょっとしたハズしの選択が大当たりした時の喜びはひとしおだ。
その後は途中、夕張に寄って、一路、苫小牧のフェリーターミナルへ。旅の中でいえばリエゾン区間のようなものだが、こういうリラックス時には、乗り心地やシートの着座感などがすごく気になってくるものだ。
見た目にタダモノではない雰囲気を漂わすホイールとタイヤは22インチで、前265/40、後295/35というファットなサイズだが、このピレリPゼロは、踏面からの当たりが感が優しいこともあり、細かい路面の荒れに対しては意外にも包み込む感じだ。
なによりも、見た目にはいかにもバリバリのスポーツモデルです的なバケット形状のシートがいい具合に身体を包み込み、見た目から想像するのとは違い、優しいタッチかつ自然な感覚で身体をホールドしてくれる。
このおかげで、長時間のドライブでも、臀部のどこかが痺れるような感覚になったりすることなく快適に座り続けていられる。ちなみに、後席までも左右バケット形状だ。
大洗に向かう復路の苫小牧港「さんふらわあ ふらの」は18時45分発。往路と同じくシングルプレミアムのツインルームでゆったりと過ごしながら帰路を過ごした。
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今回のような、シリーズの頂点に立つハイパフォーマンスモデルでの長距離移動の機会は少ないが、FペイスのようなSUVの場合、居住性、ラゲッジスペースなどの実用性と日常性を高く得たうえでの、ゆとりを越えた官能性の高さは、移動の時間を豊かにしてくれることを改めて実感した。燃費も悲観していたほど悪くなかったことは発見であったし、より現実的なことを言えば、予算が少しばかり浮くことにもなったのだった。