ヤンチャな若者に愛された名車は多い
いい悪いは別として、暴走族に愛される車種というのが以前は存在した。今ではそもそも絶滅危惧種で、少数がバイクでつるんでブンブンやっている程度だが、その昔は大人数かつクルマも混じって、週末の夜は暴走していたものだ。その名残りは日の出暴走に見ることができ、ニュースで見るような暴走が当たり前にあった。
ファミリーカーは暴走族に愛されなかった
暴走族に愛されたクルマとなるとファミリーカーではなく、時代にもよるがスポーツカーかクーペが多い。4ドアでもハードトップが愛されていて、威張りが効くほか、「箱乗り」がしやすいなどの要件も満たしている必要があった。具体的な車種としてはブタケツの「ローレル」や「サバンナ」、「サメブル」などで、どれも見た目からして怖いのが特徴だ。
そして4ドアで愛されたのが、男の日産、「セドリック」と「グロリア」。なかでも1975年、昭和50年に登場した4代目の330はとくに人気が高く、族車シリーズのプラモにもなっているほど。また、青春の思い出グルマとして「元本職」の人がレストアする動画もあったりするなど、ある意味不朽の名車だ。
人気だった理由1:ヤンチャに見えるエクステリア
人気だった秘密を考えてみると、やっぱり見た目が怖いこと。ハードトップは横長の角目で少しくぼんでいて、間のグリルも小さくて日本車離れしたアメ車のような押し出しがメチャクチャある顔つき。お尻も同様で軽くスラントしつつ、各ランプは四角でしかもメッキの枠つきというもの。
前後のメッキバンパーも大きくCピラーも極太で、ブタケツのローレルに通ずるものがあり、どこを見ても迫力満点で資質は十分。これだけでも、愛された理由は十分わかってもらえるだろう。
ちなみに暴走族に愛されたから一般ユーザーが敬遠したということはなく、マイルドな見た目の4ドアセダンもあるなど、セドグロのなかではヒット作に。永遠のライバルであるトヨタ「クラウン」に肉薄したほどだった。
人気だった理由2:どんどん手を加えたくなるベースの良さ
ベースでこの状態なので、さらに改造すれば迫力はドンドンと増したのも人気の理由だろう。コストがかかるからか、街道レーサーのように竹ヤリ出っ歯やワークスフェンダーで仕上げている暴走族の方々は少なかったように思える。だが、尻上げのシャコタンにしつつ、ワイドタイヤを履かせるだけで、一気に近寄りがたい存在ムンムンに。ヘッドライトをツリ目にしたり、マフラーは外して直管にでもすれば土曜夜の闇を切り裂くのにぴったりの1台となったものだ。
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登場から10年ぐらいして安い中古が出回ってからは、カスタムのベース車として愛された。また、『西部警察』や『大都会 PART II』などのドラマでも大活躍したのも印象深い。まさに昭和の最後、50年代を駆け抜けたやんちゃなモデルが330のセドリック、グロリアと言っていいだろう。次の430はスクエアなボディと顔つきで同様に多方面で愛されたが、330には雰囲気という点で敵わなかったように思う。