宝の持ち腐れになっている人も多い「減衰力調整」を有効活用しよう
車高調整式サスペンション、いわゆる車高調の多くには減衰力調整がついているが、交換したときに合わせたまま、まったく活用していない人も多い。そもそもどういったときにダンパーの減衰力を調整すればいいのか、あらためて解説しよう。
クルマの挙動と乗り心地をコントロールできる
せっかくついている減衰力調整ならぜひ活用してもらいたい。では、どんなときに調整すればいいのか。
まず、減衰力はサスペンションが上下する動きを抑える力。サスペンションの上下動を「減衰」させるためのものだ。減衰させないでバネだけだと、ポヨンポヨンと上下動が止まらなくなることもある。ブレーキを踏んだり、ステアリングを切ったときにサスペンションが急に沈んだり伸びたりするので、クルマの挙動が速くて乗りにくくなる。
そこで、オイルによる抵抗でサスペンションの縮んだり伸びたりするスピードをコントロールしようというのがダンパーの役割。車高調などに用意されているダイヤルを回すと、その減衰する力を調整できるのだ。
しかし、市販サスの多くは減衰力の伸び側が変わるのがメインで、縮むときの減衰力はあまり変わらない傾向にある。これは構造的にそういう傾向があるということ。メーカーによっては伸び側だけが変わるということもある。また、その伸びるときと縮むときの減衰力を独立してイジれるサスを「2way」と呼ぶ。
状況と乗り方しだいで最適なセッティングは千差万別
そこで調整となるわけだが、サーキットなどスポーティな走りをするときは減衰力を締めるというのが定説だ。しかし、必ずしもそうではない。
速度域が高くなったり、スポーティな走りでボディがフワフワとするなら減衰力をアップさせて、動きを規制してあげると乗りやすくなる。
しかし、クイックにスポーティな走りがしたいときに減衰力が強すぎると、姿勢が安定するまでの時間が長くかかってしまい、むしろもっさりと感じられることもある。
ならば減衰力は弱めで、素早くサスが縮んだり伸びたりしたほうがスピーディな動きができることがある。
これは時と場合によるので、サーキット=減衰力を締める、街乗り=減衰力を緩める、という方程式は当てはまらないのだ。
最強と最弱の3段階までは使わないのがオススメ
ではどうすればいいのか。まず、大前提として、20段階調整式でも30段階調整式でも、さほど変化量の絶対値は変わらない。減衰力の変化の幅をどれだけ細かくしているかであって、段数が多いほうがセッティング幅が広いわけではない。
そのうえで6段階調整式などを除いて、15~40段階調整式くらいであれば、まず、最強から3段戻しまでくらいは使わないのがオススメ。
そこまで締め込むと減衰力調整機構の本来の機能ではなく、異常に硬くなってしまうことが多く、ハネたりする原因になる。もっと減衰力が欲しいときでも3段戻しくらいにする。
同様に減衰力を弱める側も最弱に近い3段階くらいは、減衰力が弱くなりすぎてしまうことがあるので、使わないのが推奨。30段階調整式なら最強から3段戻し~27段戻しの間で使うイメージだ。
両端から大きく調整して乗り比べていこう
調整の方法はまず、大きく調整してみるのがコツ。30段調整式なら3段戻しと27段戻しで走ってみて、どちらが乗りやすいかをやってみる。これはサーキットでも街乗りでも同じで、ステアリング操作に遅れがあるとか、クイックになりすぎないか、乗り心地が悪くなるか、フワフワとするかを見極める。
どちらがマッチするかで27段戻しのほうがフィーリングがよかったら、今度は27段戻しと15段戻しでやってみる。15段戻しのほうがよかったら、15段戻しと20段戻しでやってみる、というように徐々に幅を狭くしていくのがわかりやすい。いきなり1段や2段ずつ動かしても、なかなか変化を感じ取るのは難しい。
こうして調整していくと、意外と街乗りとサーキットでの減衰力が近くなることが多く、調整しても数段だったりする。結局、そのクルマとスプリングにマッチする減衰力はある程度決まってくるので、街乗りでもサーキットでも似たような減衰力になりやすい。スピードレンジの違いで数段調整するくらいで、基本的に同じ減衰力になることが多いのだ。
まずは先入観にとらわれず、減衰力調整によってどうクルマの動きが変わるかを試しながら、最適な値を探ってみてもらいたい。