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安全に止まれる「大型ブレーキ」が一般に普及しない理由とは? 重量増やタイヤ&ホイール大型化によるコスト増にありました

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TEXT: 佐藤 圭(SATO Kei)  PHOTO: AUTO MESSE WEB

  • 86GRの走行イメージ

  • 普通の86には大きなブレーキキャリパーは未装備
  • 86GRの走行イメージ

高性能スポーツカーでは標準化が進む大型ブレーキキャリパー

 レーシングカーや一部のハイパフォーマンスカーに採用される、ブレンボをはじめとする大型ブレーキキャリパー。しかし、純正で有名ブランドの大型キャリパーを装着している例はごく限られ、多くは「コレで大丈夫?」と不安に感じる見た目だったりする。

 普通に考えればブレーキは事故の防止に大きく貢献し、高性能であればあるほど安全なのではないだろうか? というわけでスポーティさを前面に出した車種であっても、大型のキャリパーが採用されにくい理由を考えてみたい。

多くの市販車の使われ方ではオーバースペック

 まず誰もが思い浮かべるのはコストの問題。自動車メーカーが威信をかけて送り出すようなスポーツカーは別として、市販車である以上コストダウンは決して避けて通れない大きなテーマだ。

 アフターパーツとしてのブレーキシステムはキャリパーとローター、パッドなどすべてを含めると安くても30万円オーバーであり、サイズによっては前後セットで軽々と100万円を超えてしまう。スポーツカーといっても頻繁にサーキットを走るユーザーは多数派ではなく、常識的なスピードでの街乗りなら制動力も耐熱性も純正で十分間に合うのだ。

 仮にサーキット走行がメインの使い方だったとしても、連続で周回しなければならないレースなどを除いては、パッド交換だけで事足りるケースが大半と思われる。要はほとんどの人はそこまでの性能を必要としておらず、コスト削減にプライオリティを置いているというわけ。

普通の86には大きなブレーキキャリパーは未装備

重量増やタイヤ&ホイールの大型化というデメリットも

 さらにキャリパーやローターの大型化には、別のデメリットというか弊害も。ひとつは本来のホイールが履けなくなる可能性だ。社外のブレーキは最近でこそ純正ホイール対応の商品も増えたが、基本的には純正からのインチアップが前提と考えていいだろう。

 当然ながらタイヤも径が大きくなるほど高くなり、扁平率が低くなれば乗り心地もハードに、そして段差などでホイールがダメージを受けやすくなる。加えてサイズが大きくなればタイヤの価格も上がり、維持費を気にするユーザーからは歓迎されにくい。

 もうひとつは車重の増加。ブレーキ関連のパーツは俗にいう「バネ下」の重量に相当するため、1kgの軽量化がバネ上の10kgに相当するなんて説もあるほどだ。強い制動力が不要なのにブレーキを大型化しては、加速やコーナリングなどの運動性能はもちろん、燃費にも悪影響を及ぼすことが確実と思われる。軽さが命でもあるレーシングカーはトータルバランスを考えたうえで、メリットのほうが大きいと判断しビッグキャリパーを使っているだけなのだ。

 ちなみにナンバー付き車両レースやN1と呼ばれる改造範囲の狭いカテゴリーでは、キャリパーやローターの変更が禁止されている。制動力向上はブレーキパッドの交換で、耐久性はブレーキダクトを引くなどレギュレーション内で対応している。

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  • 佐藤 圭(SATO Kei)
  • 佐藤 圭(SATO Kei)
  • 1974年生まれ。学生時代は自動車部でクルマ遊びにハマりすぎて留年し、卒業後はチューニング誌の編集部に潜り込む。2005年からフリーランスとなり原稿執筆と写真撮影を柱にしつつ、レース参戦の経験を活かしサーキットのイベント運営も手がける。ライフワークはアメリカの国立公園とルート66の旅、エアショー巡りで1年のうち1~2ヶ月は現地に滞在。国内では森の奥にタイニーハウスを建て、オフグリッドな暮らしを満喫している。
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