そもそもPVCドリフトってなに?
PVCドリフトという言葉をご存知でしょうか? リアタイヤにポリ塩化ビニル管(PVC管)を装着し、極端にリアタイヤのグリップを下げてドリフト走行を楽しむことからこのように呼ばれています。現在日本でも少しずつ広がりを見せているPVCドリフト、その発祥の秘密から日本での現状まで紹介していきます。
安く遊べるドリフトとして人気
元々、リアタイヤを極端にすべりやすくして遊ぶ文化は10年以上前から存在していました。古くはアメリカなどでファストフード店のトレーにリアタイヤを載せて滑りやすくしていたのが起源とも言われています。そのような流れの中でPVCドリフトが誕生したとも言われていますが、日本で広がりを見せてきたのはここ5~6年のこと。
日本でPVCドリフトが広がりを見せたのは、ドリフトのベース車に最適とされているFR車の相場が高くなったため。「昔のように安くドリフトで遊ぶにはどうすればいいか?」という課題に対して、導き出された答えがPVCドリフトだったのです。
PVCドリフトには利点が沢山
PVCドリフトは多くの利点がありますが、第1の利点として挙げられるのが普及の理由ともなったコストの低さです。極めていけばPVCドリフトで単純に遊ぶだけならベース車両は基本的になんでもOK! ATのFF車でも問題ありません。そのため、個人売買などで1桁万円台の格安で購入した車両をベースにできるので、イニシャルコストが安く済みます。
そして、ランニングコストも安いのがPVCドリフトの魅力的なポイント。軽自動車のダイハツ「ミラ」やスズキ「アルト」で1日走行会を満喫した場合でも、ガソリンの減りは1目盛程度。PVCリングを装着したタイヤも手配の仕方次第では、4本で1万円しない金額に収めることができます。路面のコンディションによりますが、1日走行してもリングが切れずに持つこともあります。
通常ドリフトは2本で数万円するタイヤを1日で使い果たしてしまい、場合によっては2セット必要となることを考えると、いかにPVCドリフトのランニングコストが安いかが分かるかと思います。
そして、スキール音が出ないのもこれまでのドリフトとは異なる点で、嬉しいポイントです。近年はスキール音の問題からドリフト走行が禁止になってしまうサーキットもありますが、通常のドリフト走行と比べるとPVCドリフトの音はかなり小さいです。また、車両にパワーも必要ないので、エンジンサウンドの音量も小さくて済みます。走れる場所の可能性はこれまでのドリフトよりもあると言えるでしょう。
グリップでのドライビング上達にも
そして近年PVCドリフトは単純にドリフトを楽しむだけでなく、ドライビングのテクニック向上のツールとしても密かに注目されています。限界が低いPVCドリフトは気を抜くとドリフトを維持することができず、すぐにスピンモーションに陥ってしまいます。極端に限界の低いクルマを思い通りに操れるようにトライすることにより、クルマを操作するあらゆるセンサーを磨くことができるのです。
これから走行会や体験会なども行われていく予定とのこと。PVCドリフトは、新しいモータスポーツのひとつの形として、そしてトレーニングツールとして、今後どのような進化を見せていくのか注目の存在と言えるでしょう。